成長転換期にあるベトナムの物流業界 インフラ投資やコスト削減に工夫が必要

ベトナムは、インターネットショッピングなどの電子商取引の総取引額が、世界第6位のネットショッピング大国だ。電子商取引の拡大にともない、ベトナムの物流業界も大きく成長し、変化の途上にある。

◇投資の拡大
ベトナムのインターネットショッピングは近年、規模は大きく拡大し、中国、米国、英国、日本とドイツに次いで、世界第6位にまで成長した。商工省によると、2020年には、電子商取引は100億ドル規模に達する見込みだ。

オンラインで取引や購入される商品の数量増加よって、物流の充実が求められるようになった。大手インターネットショッピング会社、ザオ・ハン・ナイン社によると、同社の注文件数は2015~2020年の間で、年45%増のペースで増えており、今年には5億3000万件に達する勢いだという。

ハノイ市ロンビエン区のサイドン工業団地内にある物流大手、ハテコ社の4万平方メートルの倉庫は、操業を始めてまだ1年に満たない。だが、すでに取扱量が、限界に近づいているという。同社の主要顧客は、ラザダエキスプレス、ショッピーやザオ・ハン・ナインといった、インターネットショッピングサイトだ。

ハテコ社は、インターネットショッピング大手、ラザダ・グループ傘下で物流部音を担う企業だ。ホーチミン市とハノイ市、ダナン市の3カ所に大規模倉庫を開設。グループ全体で、保管庫や作業スペースとして2万2000平方メートルを確保し、全国34カ所に配送センターをもっている。

同社のディン・ズイ・リン社長は「インターネット上の買い物や電子商取引が大きく成長しており、その商品を運ぶ物流業界は、大きく発展する可能性を秘めている。商品の保管や、配送先別に分類したりするために、倉庫や作業スペースのレンタルなどの新たな事業分野も増えている」と話す。

さらに同社では、自社の物流と拡大と近代化を進め、経費節減の実現を目指している。異業種の企業と提携し、商品の仕分け作業などを自動化する機械やシステムの開発を進めている。

ハテコの物流センター「LELエキスプレス」としては、仕分け作業の自動化装置を導入した2カ所目の施設だ。この倉庫では、1時間あたり1万個の小包を取り扱うことができ、今後2年間は増え続ける配送需要に応えることができると考えている=写真㊦。

このほか、ベトナム郵便や通信大手傘下のベトテル・ポストも、物流の取り扱い増加をにらみ、先行投資を行っている。さらには、バイク便の宅配アプリを開発したザオ・ハン・ナイン社やザオ・ハン・ティエット・キエム社のように、新興企業の配送サービス業界への参入も見られるなど、業界そのものが拡大している。

◇サービス充実と価格の引き下げを
商工省傘下の海外貿易局は、さまざまな形態の電子商取引が、今後数年間でさらに爆発的に拡大し、物流取扱量も拡大すると見ている。しかし、サービスの質の向上や、価格の引き下げなど、乗り越えるべき課題はまだ多い。

特に価格面を見ると、ベトナムの物流コストは依然として高く、これが国際的にみて競争力を削ぐ結果となっている。例えば、物流にかかるコストは収益の約30%に相当しており、この率はインドの15%、米国の11.7%、中国の12%に大きく引き離されている。

道路交通網や飛行機輸送などのインフラ設備の不足が、ベトナムの物流業界が直面する最大の課題となっている。さらに、ベトナムの決済手段が依然として現金利用中心であることも商品代引きの配送を増やし、人件費増加につながっており、対策が必要とされている課題だ。

海外貿易局のチャン・タイン・ハイ副局長は、「ベトナムの物流が成長する余地は多いにある」とするものの、さまざまな自動化技術などの導入によって第4次産業革命の実現を目指し、価格を引き下げ、インフラ整備に多額の投資を覚悟する必要がある」と指摘する。