昨年11月、フィリピンのマニラで世界コメ会議が行われたが、それに併せて開催された「ワールド・ベスト・ライス・コンテスト」で、ベトナム米の「ST25」が最優秀賞に選ばれた。この歴史あるタイトルの受賞によって、ベトナム米の輸出がより一層拡大されると期待される。

◆世界で評価されるベトナム米
2015年、ロックチョイ社のイネ品種「AGPPS 103」は、世界のコメ産業に対する詳細な分析で知られるThe Rice Trader誌により、「ワールド・ベスト・ライス」のトップ3に選ばれた。また、「ST24」は、2017年に中国のマカオで開かれた第9回ワールド・ベスト・ライス・コンテストで3位に入った。

商工省外国貿易局のチャン・タイン・ハイ副局長は、「近年、ベトナム企業がコメの品質向上に努めたため、2018年に1トン当たりの価格は502ドル(約55000円)まで急騰し、同じ品種のタイ米より高値になった。同年のベトナムの輸出米のうち高品質米は80%を占めた。2019年に入ってコメの輸出は困難に直面したが、パーボイルドライスやオーガニックライスといった高品質米は、グローバル市場におけるニッチな市場を開拓した」と評価した。

カンボジア米は、2012、13、14、18年のワールド・ベスト・ライス・コンテストで最優秀賞を受賞した。そして近年、カンボジアはEUへのコメ輸出でトップ5に入り、中国への輸出も急増しているが、このことは、ベトナムが今回の受賞によってコメの輸出を拡大できる可能性を示している。

◆高品質米を輸出しやすく
同局のファン・バン・チン局長は、「商工省や関係部局などは、コメの輸出目標の達成に向けて対応を続けている」と語る。同省は、中国の輸入業者の求めに応じて22の業者の輸出能力を検証したほか、政令第107号/2018/ND-CP(2018年8月15日付)に基づいて、コメ業者の事業環境の整備も行った。

チン局長は、「政令第107号では、パーボイルドライスやオーガニックライス、微量元素を含むコメの取引を行う企業にはコメの輸出登録証明書などが必要なくなるため、高品質米の取引業者にはメリットが大きい」と続ける。

また、同省は、EUや日本、韓国といったFTA相手国へのコメの輸出を強化しており、関税の優遇措置を活用して輸出額を伸ばし、ベトナム米をPRしたい考えだ。例えば、コメの輸入税は、EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)が発効されればゼロになる。EUのコメ需要はそれほど高くないが、要求の高い市場への輸出によって、ベトナム米のブランド力が高まることが期待される。

農業分野の専門家であるヴォ・トン・スアン教授は、「ST25がワールド・ベスト・ライスに選ばれたことは、ベトナムのコメ製品にとって大きなチャンスだ。しかし、このチャンスを生かすためには、生産チェーンに沿って、ベトナムのコメ産業を再構築しなければならない。ベトナム企業は、特定のイネ品種を生産し、農薬使用を最小限に抑え、計画通りに生産を拡大できる大規模農地の整備とともに、貿易促進イベントも開催していくべきだ」と提言した。