ベトナムは、労働生産性を向上させるための国家プログラムを開始する。労働生産性は、中所得国が競争力を高めて発展するための重要なファクターであり、このことは最近のグエン・スアン・フック首相の首相命令でも強調されている。

写真㊤=タイビン省のテクスホン・ガーメント・カンパニーズで働く労働者

労働生産性は、経済や企業の競争力を測る上で決定的な要素だが、ベトナムの場合、ほかのASEAN諸国に比べて高いとは言えない。アジア生産性機構の統計によると、ベトナムの1時間当たりの労働生産性は5.2ドル(約574円)で、カンボジアやミャンマーより高いが、ラオスよりは低い。ベトナムの労働生産性は、シンガポールの8%、タイの35.86%にとどまっている。

今回の国家プログラムでは、生産性向上に向けて様々な戦略や計画が実行される。例えば、フック首相は計画投資省に対し、国の競争力を強化するための「労働生産性向上キャンペーン」の実施を計画するよう指示した。

生産性を高める試験的なプログラムは、全国実施を前に、特定の分野や地域で開始する予定だ。今年は、デジタル、ハイテク、イノベーション企業に重点を置き、成長するテクノロジー企業に対する国家戦略も策定し、政府へ提案される。このほか首相は同省に対し、民間企業の地域やグローバルでの市場拡大を促す戦略の策定も指示した。

科学技術省は、企業の生産性や製品品質の向上を支援する国家プログラムとともに、科学、テクノロジープラットフォーム、イノベーションに基づいた生産性向上のための基本計画の策定を担当。同省は、科学、技術、イノベーションにおいて、とりわけ民間企業から資源や投資を誘致するための政策を提起しなければならない。

また、商工省は、Eコマースの普及を促進し、特に製造・加工業のグローバル・バリューチェーンにおける付加価値の高い製品開発に焦点を当てて、労働力を農業から工業へ移行させるための政策提案を行う。

農業分野では、労働力主体の生産から技術力主体の生産へ移行することが求められる。フック首相は「農業生産の工業化は強化されなければならない」と指示し、とりわけ首相命令では、国のデジタルトランスフォーメーションを加速することは労働生産性の向上に不可欠とし、それには電子政府や国のデータベースの構築が含まれると強調した。

さらに、海外直接投資(FDI)を誘致し、労働生産性を高めて経済構造の移行を促進するためには、自由貿易協定で得られるチャンスを生かす必要がある。

首相命令によれば、事業環境の整備に向けて、制度改革のほか、国家運営の効率化やビジネス環境、基盤システムの改善が急がれる一方で、優秀な人材を引きつけるための給与政策も改革されるとみられる。