苦境をチャンスに 輸出減の材木、木工品業界

新型コロナウイルスの世界的拡大で木工家具を含むベトナムの輸出産業が大きな打撃を受けている。とりわけ深刻なのが中国への輸出減少だ。一方で、この苦境をチャンスととらえ、より付加価値の高いものの製造へと構造転換を促すよう求める声も出ている。

「感染拡大の影響で木材チップの輸出が減少している。中国市場への過剰な依存を避けるため、他の国への輸出にシフトすべきだ」。ベトナム材木森林生産組合のグエン・トン・クェン前事務局長は危機感を募らす。

材木業界にとって、中国は大きなウエートを占める輸出先。今回の感染拡大による影響は頭の痛い問題だ。ただ、中国への輸出は材木チップなどの原材料中心で高い利益が望めないという課題がかねてからあった。こうしたなか、より付加価値の高い人工木材や中密度繊維版(MDF)の製造などに広げていこうと、人工木材の製造機械を購入する動きがかねてから出ていた。クエン前事務局長は、「こうした業者に対して、国は低利の貸付を行って支援すべきだ」としている。

一方、ホーチミン工芸木工業組合(HAWA)のヒュン・バン・ハン名誉副会長は、「原材料を中国からの輸入に依存している多くの産業が困難に直面しているが、ベトナムの木工産業は70%を国産の原材料でまかなっている。輸入も米国やカナダ、ニュージーランドからで、影響は少ない」と話す。

市場調査会社のセンター・フォー・インダストリアル(CSIL)によると、中国は木製家具の輸出高は543億ドル(約5兆9700億円)で世界1位にランクされる。ベトナムは100億ドル(約1兆1000億円)で5位に位置するが、感染の影響による中国の低迷で、今後順位が大きく入れ替わることもありうるという。米中の貿易摩擦に加え、今回の感染拡大でベトナムを含めた東南アジアが台頭する可能性は十分ありそうだ。(VEN)