プラスチックごみを原材料に再利用 リサイクルを強化へ

ベトナムでは増え続けるプラスチックごみの量とその廃棄費用、さらにはゴミが自然環境などに与える影響などが社会問題となっている。それを解決する手法のひとつとして、プラスチックごみをプラスチック製品の原材料として再利用する動きが加速している。

大きな景気となったのは、業界団体の「ベトナムプラスチック協会(VPA)」が集めたデータだった。それによると、ベトナム国内のプラスチック製品製造企業の多くは現在、原材料の不足や調達困難などに直面。現在では廃棄されているプラスチックごみの35~50%をリサイクルし、原材料として再利用することができれば、企業の製造コストが15%抑えられると試算したのだ。

プラスチック製品の加工製造分野はここ数年、前年比16~18%の伸びを見せており、ベトナム国内でももっとも成長の著しい産業分野のひとつ。国内の企業数は約2000社にのぼるが、このうち450社は梱包材やパッケージメーカーで、製品が利用後すぐ、莫大な量の廃棄物となって社会の大きな負荷になっていることが問題視されていた。

ベトナムは2018年、プラスチック原料を数量で559万トン、価格にして91億ドル分を輸入している。前年と比べ数量で11.9%、価格で20%の上昇だった。VPAの予想では、この原材料需要は今後さらに毎年10%近く伸びると見込んでおり、2023年までには1000万トンに達する見込みだ。だが、ベトナム国内で生成し、調達できる原材料は260万トンで、需要全体の26%に過ぎない。740万トンは輸入に頼らざるを得ない状況だ。

さらに、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、海外からの再生用プラスチック廃材輸入は縮小傾向にある。そこで、代替として注目されるようになったのが、国内で廃棄されたプラスチックごみだ。リサイクル利用すればエネルギー効率がよいうえ、石油などの再生不可能な枯渇性資源の節約にもつながる。さらに、ごみだらけの景観や自然環境の破壊などの社会問題も解決できると期待が高まっている。

環境基準の順守や高機能の機器の新規導入、技術調達や環境保護法の順守など、課題も多いが、現在のようにプラスチック製品の製造企業の原材料需要が高まる時期に、政府が音頭をとって、適切に情報を広めることができれば、プラスチックごみのリサイクル活用に大きな拍車がかかりそうだ。

政府はこのほど、企業にプラスチック材を含めた廃棄物や産業ごみなどの回収調達を促し、再利用にむけた機器や技術の導入費用のために、優遇施策を採用した。プラスチックごみの大規模なリサイクルの実現によって、プラスチック原材料を海外輸入に依存する体質が改善され、国内企業の原材料需要の50%を賄うことができるようになる。

実現にあたっては、ゴミが発生する家庭や事業所などでの、ごみの丁寧な分別が不可欠だ。また地方自治体は、廃棄物収集や処理に必要なインフラへの投資と開発を加速するため、政府と業界が投資促進政策を実施する必要がある。

ベトナム環境保護基金は、プラスチックの再生利用にかかわる企業を対象に、プロジェクトに必要な資金の最大70%までを、年間利率を2.6~3.6%に抑える優遇措置を始めた。プラスチックのリサイクルと再利用、さらには生分解性プラスチックの活用など、環境に優しい新技術や課題解決方法は、今後、注目の高まる分野となりそうだ。