ベトナム計画投資省はこのほど、今年第1四半期の外国直接投資(FDI)が、123億3000万ドルだったと発表した。前年同期比15.5%の減少だったが、新型コロナウイルスの感染抑制策などを高く評価し、外国投資家らの多くは、ベトナムの中長期的視野な経済回復について期待感を示しているという。

◇新規投資案件1000件に迫る
ベトナム計画投資省によると、今年1~4月のFDIは、123億3000万ドル。前年同期の約84.5%にとどまった。新規資投資だけでみると、件数は前年同期と比べ26.9%増えて984件、新規登録資本総額は67億8000万ドルだった。新規投資のうち、バクリュウ省の液化天然ガス(LNG)発電所プロジェクトは、今年初めて10億ドル規模を超える大型プロジェクトとなり、その総資本額(約40億ドル)は、全体の約59%を占めた。

計画投資省傘下の外国投資局の分析では、新規・追加登録された資本は前年比増だったものの、昨年は大規模の案件があった出資や株式取得が減ったために、結果としてFDI全体ではマイナス成長になったという。ただ、2016年から3年間の同時期との比較では、2016年の79%増、2017年の16.4%増、2018年の52.3%増と、投資総額は大きく伸びており、「前年同期比マイナスとはいえ、新型コロナの経済的混乱の中での数字でもあり、単純に悲観すべき内容ではない」と指摘した。

国・地域別にみると、1~4月のFDIは、シンガポールが50億7000万ドルでトップ。2位がタイ(14億6000万ドル)、3位は日本で11億6000万ドルだった。これに中国、台湾、韓国が続いた。

一方で、既存のプロジェクトへの追加投資は、バリアブンタウ省での石油精製施設への追加投資(13億9000万ドル)など335件が認可され、金額では計30億700万ドル(前年同期比45.6%増)となった。

外国企業や個人によるベトナムの株式購入は、24億8000万ドルで、前年同期の65.3%だった。出資や株式取得の1件あたりの平均金額は、7700万ドルのみで、過去の同時期と比べても最も低い値となった。

経済専門家のカン・バン・ルック氏は、「出資や株式取得の減少は、株式市場の強い売り傾向が根本にあったため」と分析。「減りはしたものの、隣国のタイやフィリピン、インドに比べれば減少幅は小さいものにとどまった」と話した。

◇投資意欲は前向き
新型コロナウイルスの感染は世界各地の経済に悪影響を与えたが、ベトナムも例外ではない。世界銀行、アジア開発銀行ともに、ベトナムのGDP成長見通しを引き下げた。ただ、東アジア地域の中で見れば、ベトナムの成長率は比較的高くなると期待される。

FDI投資を行う企業も、ベトナムの中長期的な経済回復については楽観視しているようだ。ベトナムのドイツビジネス協会(GBA)の調査によると、投資企業の約9割は「ベトナムでの投資を減らすつもりはない」と返答。「対ベトナムのビジネスを拡大する計画だ」との回答もあり、投資意欲は前向きな意見が多かった。

GBAのエリック・ピーター・モラー会長は「ベトナム政府の新型コロナ危機への対応には力強さが感じられた。今後もこのような措置が取られ、適切な緊急経済支援策も講じられるのであれば、ベトナム経済は力強く回復する可能性が高いと信じている」と説明。海外各国との比較でも、「今後も魅力的な投資先であり続けるのではないか」とした。

このように、ベトナムが海外からの投資を引き付けられるのは、効率的で効果的な新型コロナ対策のおかげといえる。もうひとつ、ベトナムに有利に働いたのが、米中貿易戦争で、これが投資家らに中国以外のアジア圏への事業転移を促した。このような状況に加え、経済発展の可能性や効果的な疫病管理、政策による積極的な投資環境の改善などが、ベトナムに有利に働いていることは確かだ。

また、欧州とベトナムの間の自由貿易協定(EVFTA)がこの夏にも両国間で批准される見通し、でこれも今後の欧州からの投資拡大につながる好材料とされる。

この状況を受けて、ドー・ニャット・ホアン外国投資局長は、政府に対し、新型コロナの感染拡大で影響を受けたFDI企業の支援策実施を求め、国内企業に向けては、「今後の海外からの投資の回復に向けて、いちはやく準備を行うべきだ」と提言した。