新型コロナの世界的な感染拡大から経済を回復させるために、ベトナムの経済専門家らが、民間企業の発展促進の重要性を指摘している。私企業が期待通りに成長し、コロナ後の経済発展をけん引する動力となるには、ビジネス環境のさらなる整備や優遇のほか、個人事業などの法人化促進が急務となりそうだ。

世界的な新型コロナの感染拡大で、従来は中国に向けられていた資本投資のベトナムシフトが見られ、世界的な製造中枢に成長できる大きなチャンス到来の兆しが見られる。だが、ベトナム商工会議所のブー・ティエン・ロック会頭は、「ベトナム企業は、いまだに新型コロナウイルスが引き起こした危機の真っただ中にいる」と厳しい目で見つめる。「この重要局面で、世界のバリューチェーンに参加しようとする意欲をもって、ベトナム企業が競争力を大幅に向上できなかった場合、せっかくの好機を逃してしまうだろう」と指摘する。

ロック会頭は、さまざまな改革を加速させて、民間企業にとって良好な環境を創出することが必要だと話す。具体的には「制度改革の加速」「行政手続きの簡素化」「投資環境の改善」の3点に焦点を当てて、民間企業対策を測るべきだという。

「中小企業を中心とした民間企業が競争力を向上させ、多国籍企業の対等なパートナーになろうと努力することが、ベトナムの経済成長を成功させる決定的な要因だ」とロック会頭は強調した。

経済専門家のゴー・チー・ロン氏によると、約96%のベトナム企業が中小または零細企業であり、これが民間部門の成長の大きな障害となっていると説明する。さらに、企業法人の形態をとらず、家族や個人経営になったままの事業所が約500万もあり、これらを法人化させる作業は、効率よく進んでいない。

企業コンサルティング会社、エコノミカ・ベトナム社のレ・デュイ・ビン取締役は、「ベトナムでは事業を確立したり、投資を行ったりする際の手続きが煩雑だ。企業が法令や倫理遵守を確立する時間も費用もかかりすぎる」と課題を指摘する。

加えて、いわゆる“袖の下”などの非公式の手数料などの問題を指摘。各地方省庁や都市の競争力指数調査では、50%以上の企業が、「非公式料金を支払う必要があった」と答えるなど、企業にとっては小さくない経済負担となっている。

民間企業と、国の資本が投入された公的企業、海外投資企業などの間で、格差があることも問題視されている。公的企業や海外投資企業と比べ、ベトナム資本の民間企業は資本の供給や、ビジネスチャンスに巡り合うことが圧倒的に難しいのが現状なのだ。

今年は、前年比5%超えの経済成長率が国の目標だったが、達成は厳しい状況だ。政府は新型コロナ対策で疲弊しており、今年下半期に、大型の公共投資を行う体力はない。そのため、コロナ後の経済成長を推進するには、民間投資の増加が不可欠だ。

ビジネス環境における障害を排除し、早急に民間投資を活性化する必要があるため、「企業のコスト削減できるような環境改善が重要だ」とビン氏は指摘し、不適切な行為で企業を困らせる役人は、厳しく罰せられるべきだとの強い姿勢を示した。

ベトナムの国内総生産(GDP)の約40%が民間の企業と個人経営の事業所によって生み出されているという。ベトナムは、今年じゅうに、民間企業を少なくとも100万社以上にまで増やしたい考えで、これが実現できれば、民間企業がGDPの50%を担うことになる。さらにベトナム政府は、2030年にはこの数を200万社に倍増させ、GDPの60~65%を民間企業の収益で実現することを目標としている。