ベトナムのデジタル変革 新型コロナ契機に国内企業が躍進

ベトナムは「国家デジタル転換計画」に基づき、IT(情報技術)化やデジタル化を促進させている。国は2025年までに東南アジア諸国連合(ASEAN)のデジタル大国4位以内と、世界経済フォーラム(WEF)世界競争力ランキングのIT部門でトップ40カ国入りを目指しているが、先の新型コロナウイルス感染を契機に、国内のIT企業が躍進しているという。

ベトナムのデジタル業界は今、二重の意味で恩恵を受けている。一つは、社会を困惑させた新型コロナウイルス感染の拡大だ。人同士の直接接触が限られたことで、「IT利用の必要性が増し、ベトナム国内のデジタル変革を躍進させる契機になった」と、業界団体のベトナムソフトウェア・情報技術サービス協会は指摘する。

もうひとつが、昨今、国内のIT企業が自社製品の完成を使命とするようになり、開発を加速させる意識が高まったことだ。そのため、ベトナムは海外のIT企業の進出や投資が増えたものの、多くの国内企業も躍進することとなった。

一例として挙げられるのが、情報通信省のもとで、ベトナム郵政総公社(VNポスト)がこのほど構築した、新たな郵便番号基盤「Vポストコード」だ。これは国独自の技術として、郵便番号システムとデジタル地図情報を組み合わせ、住所や正確な位置を素早く特定できるものだ。新システムで郵便物配達のほか、人々の移動も容易になるほか、物流やインターネットショッピングなどのeコマース(電子商取引)企業の利便性を大きく向上させ、作業や時間の効率化、コスト削減、競争力強化などで大きな利点となり得る。

オンライン会議などを行うためのプラットホーム基盤「Zavi」は、この種のソフト開発としてはベトナム初となった。コロナ禍のニーズの高まりを受けて、ベトナムのエンジニアが知恵や技術を集結させ、わずか3週間足らずで完成。最大100人が24時間連続、オンライン上で集うことが可能だという。Zaviの完成は、ベトナムのIT業界の目覚ましい進歩を象徴するできごとといえる。

これらの〝ベトナム製〟のソフトやサービスは、いずれも国際基準に適合しており、今後、海外製の製品やサービスへの依存を減らし、国のデジタル化を促進する起爆剤となり得る。
しかし、ベトナム企業が研究開発のさらなる大きな波を作り出すためには、国の支援や国内顧客による積極的な利用が不可欠となってくる。

そのためIT企業は、業界支援の指針や戦略を求めており、国は早急に対応する必要がある。各製品の品質改善などで企業を手助けするほか、研究開発分野への投資を強化する環境づくりや法整備、研究開発分野の人材を対象とした適切な給与体系づくりなどにも取り組む必要がある。

また、国内企業の製品に類似した海外企業製品が作られた場合は、国産製品を保護すべきで、ライバル商品の輸入を制限する非関税障壁の設置などが検討されている。消費者がベトナム製の製品やサービスのよさを理解できるよう、普及活動や情報拡散を強化することも必要だろう。