アジア開発銀行(ADB)など国際開発金融機関が、新型コロナウイルスで影響を受けたアジア諸国の中小零細企業を対象とする経済支援に乗り出している。ベトナムも対象国になっており、経済再建への効果が期待される。

写真㊤=新型コロナウイルスの影響で、中小零細企業は大きなダメージを受けている

新型コロナウイルスをめぐっては、ADBが開発途上加盟国に向けの65億ドル(約6900億円)の救済パッケージを発表。うち36億㌦(約3810億円)は、パンデミックによる健康、経済対策が対象で、16億㌦(約1690億円)が零細、中小企業対策。ADBの浅川雅嗣総裁は、「状況しだいではさらなる支援の準備ができている」と語り、開発途上国向けの支援パッケージについては、迅速、柔軟に行うとしている。

国際通貨基金(IMF)も非常事態用として約500億㌦(約5兆3000億円)を低所得国と新興国向けに準備。うち100億㌦(約1兆600億円)は、最貧国向けの無利子融資にあてる。また、世界銀行(WB)と国際金融公社(IFC)も、企業支援と国家の予防抑制対策向けの短期の財政支援を140億㌦(約1兆4800億円)に増額。この中には、国際復興開発銀行(IBRD)の27億㌦(約2860億円)、国際開発協会(IDA)の13億㌦(約1370億円)なども含まれており、ベトナムを含めた中所得国や低所得国向けの補助金を準備した。WBグループでは融資だけでなく、政策上のアドバイスや技術支援も実施。WBによると、支援金は開発途上国の感染対策に迅速に使われているという。

こうした支援と合わせて、IFCでは民間企業の支援のため、ベトナム国内のアンビン、ティエン・フォン、ベトナム国際商業、ベトナム・プロスペリティーの4銀行に対して取引限度額を増2億9400万㌦(約310億円)に拡大した。また、台湾のCT&Dグループとホーチミン市政府の合弁による大手不動産開発会社、フー・ミー・フンが事業継続できるように7500万㌦を融資。融資をもとに同社は、土木業者への財政援助を進めるとともに雇用維持を図る。同社のゲーリー・チェンCEOは「地域の企業は雇用の源泉であり、国家の経済力の原動力だ。IFCの援助によって、地域のクライアントへの財政支援が可能となるだろう」と話す。

IFCのベトナム・コロンビア・ラオス・を担当するカイル・キルホッファー・マネージャーは「経済的損失を食い止めるため、民間企業の支援に注力している。経済の安定的な回復を支援することで、地域のパートナーに信頼感と責任感を示していきたい」としている。