3カ月以上も新型コロナウイルスの市中感染が押さえ込まれていたベトナムだが、7月下旬以降、再び感染の波が発生し、企業は経済活動を維持しながらの感染拡大予防策を迫られている。第1派のときに感染を封じ込めた手法を振り返り、さまざまな規制を強化しているベトナム最大の企業グループ、ベトナム石油ガス総公社(ペトロベトナム=PVN)の事例を紹介する。

ハノイ市のペトロベトナム本社では、このほど開かれた今年1~7月の業績検討会議で、グループ内での新型コロナウイルス制御策を話し合った。この会議でレ・マイン・フン社長は、社員らが実施する感染予防策を称え、「今後も状況展開に応じて、管理職や社員に自発的に行動してほしい」と呼び掛けた。

ロシアとベトナムによるジョイントベンチャー企業、ベトソフペトロは8月初旬、自社が運営する海上の石油やガスの採掘施設や内陸の拠点などで、新型コロナの予防策を再開させた。同グループではまだ、感染例は報告されていない。掘削施設管理などを展開する関連会社、ペトロベトナム・ドリリング社でも、迅速な対応や生産の安全性、同社で働く外国人専門家らへの影響や生産の効率化など、考え得るさまざまな行動制御のシナリオを策定した。

一方、グループ傘下のペトロベトナム化学肥料製造(PVFCCo)は、全社員に最新情報を伝達し、「感染拡大のリスクを最小限に抑え、社員の健康を確保することで、事業や生産活動を継続しよう」と求めた。社屋に入る社員や来客らには全員、手指の消毒=写真㊤=などを行っている。

◇安全性と生産の両立目指す
第2派の感染の多くが、ダナン市とクアンガイ省での市中感染だったことから、ベトナム最大規模の石油精製施設であるクアンガイ省のビンソン製油・石油化学社(BSR)は8月3日以降、危機感を募らせ、さまざまな新型コロナ対策に乗り出した。

同製油所には毎日、出勤する社員や職人のほか、食事などを提供する外部業者、メンテナンス作業を行う下請け業者らを含め、毎日数千人が施設を出入りしている計算となる。そこで、体調などを記す問診票を提出し、出入りを許可する身分証明書のチェックを受け、精製所に入る前の消毒や体温測定なども義務付けた。

また、グループのPVガス社では、医療機器を備えておくほか、感染予防に配慮した物流計画を準備し、承認されたプロセスで対処するよう指示。特に、生産部門については、状況に応じて最適な生産が行えるような人員配置を設計し、会社が必要と判断したときにすぐに迅速に変更できるようしているという。

カマウ省に生産プラントをもつペトロベトナム・カマウ肥料社では、社員らが常に適切な距離を保つよう求められ、施設に入るためにサーモグラフィーによる体温チェックを実施している=写真㊤=。感染の再拡大を受け、社内の「新型コロナウイルス感染拡大予防委員会」が緊急会合を開催し、以前から策定していた上記の措置に乗り出した。「感染の拡大は非常に複雑だ。感染予防のために、当初の計画案をさらに強化して実施している」と同社のバン・ティエン・タイン社長は話す。

タイン社長はまた、「対策措置と同じくらい大切なのは、スポーツ活動を提案したり、栄養状況を改善したりすることで、長期的に職員らの安全を守り、健康を維持することだ」と強調。基本的な医薬品や医療機器の備蓄に加え、企業としては、社内の情報交換を活発に行うことにしており、「職員らに適切に情報伝達することで感染の危険性を自覚させ、保険省や会社の経営陣らが推奨する行動をとることを促したい」としている。