ハノイの1~8月の鉱工業生産指数 前年同期比4.1%上昇

ベトナムの首都、ハノイ市は、2020年の成長目標を前年比4.5~5%増としていた。目標達成のため、同市共産党委員会のブォン・ディン・フエ書記はこのほど、各部局に働きかけ、現場の課題を解決し、各企業に生産や事業計画を見直すよう呼び掛けた。ハノイ市商工局によると、今年の1~8月のハノイ市の鉱工業生産指数は、前年同期比で4.1%上昇したという。

◇工業生産全体は上昇 分野ごとにばらつきも
ハノイ市の鉱工業生産指数で上昇したのは、製造加工業が4%増、発電・送電の分野が6.1%増、上下水道事業が5.6%増だった。鉱業分野は8.5%低下したが、全体に占める割合は小さいため、鉱工業全体への影響は限定的だった。

昨年同時期と比べて、特に伸びが大きかったのが電子製品・コンピューター生産の分野で、前年同期と比べて19.2増加した。また、紙・紙製品は11.2%増、食品加工業が9.7%増だった。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、ベトナム国内だけでなく世界的にも、消費財の需要が減少したことが影響し、繊維製造業(前年同期比3.3%減)、アパレル産業(前年同期比3.9%減)、皮革製品(前年同期比5.9%減)、飲料製造(前年同期比16.5%減)などと、分野によっては縮小傾向も見られた。

例えば、影響の大きかったアパレル分野では、衣類製造会社のガーメント10(GARCO 10)が今年9月以降の新たな注文を受注できていないという。需要の世界的な減少傾向のなかで、繊維製品の価格が今後20%程度下落する可能性が指摘され、同社では危機感を募らせている。

また、80の国と地域へ製品を輸出するハノイの貿易大手、ハイ貿易社(HAPRO)は、新型コロナの影響を受け、上半期の輸出額は前年同期の48.04%、1721万ドルにとどまったと話す。自社ブランドを発信し、新たな顧客や事業パートナーを見つける重要な機会となっていた大型の貿易展示会や専門的な見本市などへの参加を、すべて見送らざるを得なかったことが響いているという。

◇公共投資拡大などの取り組み強化
ハノイ市の過去8カ月の税収をみると、前年同期と比べ1.8%の微増だった。8カ月間の税収と土地使用料徴収などを合わせると、ハノイ市の8カ月間の総収入は147兆ドンを越え、通年の収入見込みの約56.5%を達成している。

一方の公共投資は目標の45.41%にとどまっており、このような緊縮が市の経済成長だけでなく、生産や企業活動、雇用の創出などにも影響すると指摘された。

1~8月のハノイ市の地域内総生産は、国の平均の約1.92倍で、前年期同比3.49%増だった。市党委のフエ書記は、「第4四半期に4.5〜5%の年間の経済成長目標を達成するために、各部局と支部、地域などが連携して企業の課題解決につとめ、具体的なシナリオで各分野の事業や生産計画などを検討する」と決意を語る。

首都ハノイは、国の平均値の1.3倍の経済成長を達成し、大規模な公共投資などを実施することを、今年の目標としている。その実現のために、経済を回復し、発展させるために、企業投資家にメリットの大きい投資環境実現のための行政改革などに取り組み始めているという。

また、新型コロナの社会経済への打撃を少しでも低減させるための支援を今後も継続し、収入源を増やし、その成果として、公共投資を増やしていく覚悟だという。これまでに市は、提案された124のプロジェクトのうち、122件の計画を承認。すでに76件に着手しており、30の市や地区のうち25のエリアで公共投資実施につながったという。ハノイ市当局や各地区では、公共投資の実施実現で直面した苦労や課題についての情報を共有しており、これも前向きな成果をもたらしているという。

さらにフエ書記は、市に対して、社会保障充実と投資実現の財源とするために、約260兆ドンの予算枠を確保するよう求めた。また、公共投資に関しても、市や区に対して、前年度からの繰越金を含めて、割り当てられたすべての公共投資資本を必ず活用することなどを求めた。

さらに、社会経済的発展に向けた使命を果たすために、フエ書記は人民委員会に対して、企業活動を監督するために5つのチームを立ち上げるよう指示。各区や市、プロジェクト管理組織などが抱える課題や問題点をリストアップし、毎月10日と20日に進捗状況を党に報告するよう義務付けた。