ベトナムでサプライチェーンの拡大計画 外資の約4割 コロナ禍のFDIもまずまずの成果

計画投資省傘下の海外投資局はこのほど、今年9月20日までのベトナムの外国直接投資(FDI)が総額約212億ドル、前年同期の約81.1%に達したと発表した。また、外資系銀行の調査では、ベトナム進出企業の40%近くが「ベトナムでの部品や原材料供給先拡大を計画している」と回答するなど、新型コロナウイルスの感染拡大で世界的に投資が激減するなかでも、ベトナムのFDIはまずまずの成果を挙げている。

ベトナムが海外の投資を引き付けた要因としては、政治的な安定性▽経済発展が目覚ましく、しかも今後も継続すると予想される▽人的資源が豊富▽好ましい地理的条件―などが挙げられる。さらに、ベトナムが、欧州連合との自由貿易協定(EVFTA)や、環太平洋パートナーシップに関する先進的かつ包括的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)など、多くの自由貿易協定を締結していることも好材料だ。

さらに、今回の新型コロナの世界的拡大にあって、ベトナムが展開した感染拡大の予防策や感染抑制策が効果的であったことも、ベトナムの投資先としての魅力を増大させる契機となった。

このほど、スタンダードチャータード銀行が行った調査によると、同行がアンケート調査を行った外資系企業のうち、38%が「ベトナム国内で、部品や原材料などの供給を受けるサプライチェーンの拡大を計画している」と回答したという。この割合は、ASEAN(東南アジア諸国連合)各国の中で最も高かった。

同行のベトナム、ASEAN、南アジア市場統括部門のニルクト・サプル代表は、ベトナムが若くてダイナミック、さらには技術に精通した人口が多いことや、国内市場が拡大していること、中流階級の増加と経済開放が促進されていることなどの基本的な要因に加えて、「ベトナムは継続的に魅力的な投資機会を提供し続けていることが強みだと考えられている」と分析する。「ASEAN諸国との地理的な近さとともに、それらの国々との太いパイプなども利点であり、多くの多国籍企業がベトナムでのビジネス展開や投資を促進することに積極的だ。新型コロナの完全な感染抑制までには時間がかかるだろうが、それすら投資家らがベトナムでの事業を維持し、さらに拡大する機会を求める妨げにはならないだろう」と話した。

「優れたFDIプロジェクトをベトナムに誘致し、確実に長期的な投資を呼び入れるためにも、ベトナムは透明性を重視し、インフラや物流サービスなどが整備された投資しやすい環境を目指す必要がある。同時に労働者の質を向上し、企業の管理体制も強化すべきだ」。こう分析するのは、アジア開発銀行ベトナム支店のグエン・ミン・クオン主席エコノミストだ。

ベトナムは、品質、効果、ハイテクや環境保護などすべての基準を満たす投資プロジェクトだけを厳選する方針で、クオン氏は、「特に歓迎されるのが、最先端技術や近代的な企業ガバナンスを駆使するプロジェクト、高い付加価値の創造につながる事業、製造業企業群とのつながりや、人材資源の教育訓練などを構築できるような計画だ」という。

新たなFDIを呼び込むために、ベトナムは土壌汚染を取り除き、工場整備を進めるなど、環境に配慮したインフラ設備の構築にも当たってきた。また、国を挙げて人材育成も加速させ、海外から専門家や高い技術をもった技術労働者らを招いており、すそ野産業の発展や、高品質の製品の大量生産を実現するための動機付けとして重要視している。

さらに、新型コロナ禍が終息した後、ベトナムへと製造拠点の移転を呼び寄せようと、ベトナム政府は新たに特別ワーキンググループを発足させたところだ。グループはすでに資本金が5億ドル以上の複数の主要な技術関連企業と協力。高品質製品の製造、ハイテク技術の導入、革新的プロジェクトの実現などにむけて動き始めているという。