新型コロナによる輸出減、皮革・履物業界が抱える課題

ベトナムの皮革・履物産業が、自由貿易協定を最大限活用するためには、生産の再構築とともに、品質や輸出能力を高めるための生産機器の導入が不可欠だ。

◇輸出目標の達成は困難
商工省によると、今年9月の皮革・関連製品の生産指数は、前月と比較して4.5%上昇したものの、前年同期比では0.4%減少した。今年1~9月期でみると、前年同期比で3.8%減少している。この9か月間の履物の輸出額は120億8000万ドル(約1兆2600億円)と推定され、前年に比べて8.8%下がった。

ベトナム皮革・履物・カバン協会のファン・ティ・タイン・スアン副会長は、「皮革・履物産業は、新型コロナウイルスによる悪影響を受けている」と指摘する。今年1~9月期の生産や輸出状況を踏まえると、今年の輸出目標である240億ドル(約2兆5000億円)は達成できないとみられる。

スアン副会長は、「この9か月間で、履物の主要な輸入元である米国、中国、日本、ベルギー、ドイツは、前年同期に比べて10%程度、輸入を減らしている」と説明する。例えば、ベトナム製の履物やカバンの全輸出額の12%を占める中国は、19%以上減少した。ベルギーも17%のダウン。日本は2%減、ドイツは10%以上減少した。

国内企業は年間で、履物は11億足以上、ナップサックやハンドバッグでは約4億個の生産能力を持つ。ただ、国内市場にそれだけの需要はなく、輸出需要が減る状況では、企業は一時的な生産停止や減産を余儀なくされる。多くの企業は、国内で販路を拡大する道を選んだが、1700社以上を抱える業界の供給能力は、市場の需要を上回っており、満足のいく成果は得られなかった。

◇推進力のある政策を
スアン副会長によると、今年第4四半期の初めまでに、中国やシンガポールからの生産資材の輸入は50%以上回復したが、米国やEUといった主要市場からの受注は依然、低迷している。皮革・履物業界は、これから年末にかけてさらに販売は苦しくなると予測され、主要市場では今後も新型コロナウイルスの状況に左右されるとみられる。

多くの企業は、8月1日に発効したEU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)が輸出機会を生み出すと期待しているが、実際には、貿易協定を生かして輸出を増やすことは容易ではない。現在、皮革・履物・カバン業界の85%が中小企業であり、資本や技術力に限界がある。これらの企業は資材の輸入では、中国に大きく依存している。さらに、企業間の連携も進んでいない。

ミン・ティエン衣服・カバン会社(Minh Tien Garment Handbag Company Limited)のグエン・チー・キエン取締役は、「国内企業にとって、国際基準を満たすことが最大の課題だ」と指摘する。キエン氏は「企業は、効果的な貿易促進活動に加えて、法人所得税の免除、金利補助、地代や物流コストの削減といった政策によるサポートを期待している」と話す。

また、フイ・ホアン履物生産会社(Huy Hoang Footwear Production Company Limited)のレ・フイ・ティエン取締役は、「企業が競争力を高めるためには、製品価値を向上させ、市場の需要を満たすために必要な変化を率先して行わなければならない」と述べる。

商工省は、皮革・履物企業がEVFTAを最大限に活用し、ベトナムの責務を果たしながら、国際的な競争力を高めるためには、生産機器を改良し、資材の輸入依存度を最小限に抑える必要があるとしている。