商業施設運営などを中心に多角経営を展開するベトナムのコングロマリット、ビングループ傘下の携帯端末機器製造、ビンスマート社は、今年年末までに、第5世代移動通信システム(5G)対応スマートフォンを、米国向けに輸出すると発表した。

ビングループのレ・ティー・トゥー・トゥイ副社長が明らかにした。

米国の情報技術大手、クアルコムとビンスマートは、2018年に、多機能端末を対象とする特許ライセンス契約を締結。この合意により、ビンスマートは、4Gや5G対応型の多機能端末を開発製造し、独自ブランドを確立することができるようになった。この実現によって、ビンスマートが目指していた、「2028年年までに国際水準の技術系企業になる」との目標に大きく近づいた。

両社の提携以降、ビンスマートはクアルコム社のスマホ、スナップドラゴンを基盤とした13機種のスマホを開発し、ベトナム国内だけではなく、スペインやロシア、ミャンマーといった国際市場でも販売展開を始めていた。今年9月には、同社初となる5G 対応端末「Vスマート・アリス(VSmart Aris)」を投入し、両者の企業提携に新たな一歩を刻んだ。

VSスマート・アリスは、クアルコムの「スナップドラゴン765G 5G対応版」をもとに開発された高級機種。特殊機能を多く盛り込んだうえ、特徴的なデザインも高く評価されている。自撮り用側のカメラをディスプレイ内に埋め込んで、カメラを使用しないときには全面をスクリーンとして活用できる「サブスクリーンカメラ」を搭載した世界で2番目のスマホとなった。

トゥイ副社長は、クアルコムとビンスマート社は共同で、この機種をもとに、世界各国のネットワークで活用できる「Vスマー・アリス5G V742」の開発に取り組んでいると説明した。

ビンスマートは、国際展開を拡大すると発表し、今年の米国市場参入についても触れた。トゥイ副社長は、「米国市場向けの5G対応スマホは、ビンスマートの今年のターゲットのひとつで、来年度はさらにその製造輸出を展開していく」と説明した。

クアルコム社は、米国の規格基準であるPTCRBの基準審査、米国市場で販売するための必要な諸認証などのほか、クアルコム社の開発研究部門(ハノイ市)との研究展開を行う。クアルコム社に蓄積された知識や経験の共有や、得意先などの接点開拓にも期待する。

両社は、モバイル型のWi-Fiルーター、顧客宅に設置する各種の機器やカメラ、5GのモバイルWi-Fiを通じて常時ネットに接続できる小型パソコン(ACPC)など、4Gや5G対応の新しい製品群の拡大にも取り組む。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で在宅勤務やオンライン学習などが増えるなか、消費者の需要にも対応する。

クアルコム社のベトナム・ラオス・カンボジア地区代表、ティエウ・フォン・ナム氏は、「一旦、5Gモデルが普及すれば、ビンスマートとクアルコムは、5G危機の低価格帯商品の市場で優位にたつことができる」と期待を述べた。

ベトナム産初の5G対応スマホとなるビンスマート製アリスの登場は、ビングループの研究開発能力の水準の高さを証明。ベトナム国内の通信インフラを変革させる準備が整ったことを示す。「ベトナムは近い将来、5G技術で世界と同水準に達すると確信している。インダストリー4.0時代におけるベトナムの技術進歩の加速を示す画期的なできごとだ」とナム氏はいう。

クアルコム社との提携はその他の分野にも好影響をもたらしており、例えば自動車機器や、情報とエンターテインメントを融合させた機器の開発などへと、幅を広げている。また、クアルコム社の機器を活用して確立されたAI(人工知能)アルゴリズムでは、他社からのOEM製造製品やソフト販売提供、さらにはベトナムにおけるスマートシティ構想などのプロジェクトへの応用促進にもつながると、期待されている。