今年1-9月の統計によると、シンガポールのベトナムに対する海外直接投資(FDI)が47億㌦(約4840億円)に達し、全体の44.9%を占めて最大の投資国なった。2位の韓国は、30億㌦(約3090億円)だった。3位の中国は17億5000万ドル(約1800億円)だった。

計画投資省海外投資局のド・ニャット・ホアン局長は、「シンガポールからの投資は、主に加工業、貿易、不動産部門で増加。貿易額は12位で、2019年は73億㌦(約7510億円)に上った」と話した。

ホーチミン市では今年1-9月、同市へのFDI全体の約4分の1を占める8億1350万㌦(約830億円)を追加投資。同市でトップになった。また、ビンズオン省でも投資額は1億9800万㌦(約200億円)に上り、全体の16%を占めて国別3位に。ドンナイ省でも総額36億㌦(約3700億円)で、4位となった。

コ・ジー・セン・ロイ・シンガポール総領事は、「ホーチミン市とビンズオン省、ドンナイ省への不動産投資は大きな成果を上げた。ほかにも多くの企業がベトナム市場への進出をうかがっている」と話す。また、「他国で行っている投資を、自由貿易協定を結ぶ国々へとシフトさせる傾向があり、すでにベトナムに投資している企業も、投資拡大を計画している」と、今後も増加するとの見方を示した。

商業地や工場用地の不動産や物流はベトナムで急成長している分野だ。シンガポールの投資家は数年前からこの動きを読み、国内各地に進出してきた。セムコープ(Sembcorp)・デベロップメントグループは1996年、ビンズオン省の公営デベロッパー、ベカメックス(Becamex)IDCとの合弁事業として、1000㌶規模のベトナム―シンガポール工業団地(VSIP)を開発。年末には、3カ所目が完成の予定だ。

ベトナムは、シンガポールの企業や投資家に対して、先端技術や研究開発、工業団地のインフラ、製造加工業業、すそ野産業などへの投資も呼びかけており、成果を上げつつある。一例としては、フィンテック分野のスタートアップ企業、フィナクサー(Finaxar)が、インドビナバンク(Indovina Bank)と協力し、中小企業の金融的支援を行っている。

シンガポール製造業連盟(Singapore Manufacturing Federation)会長で、シンガポールビジネス連盟(Singapore Business Federation)副会長のダグラス・フー氏は「自由貿易協定は双方の国の協力を強化し、ビジネスにおける結びつきを強化している」と話している。