日本からの投資、コロナ禍でも高い水準を維持 今後も成長に期待

日本の企業は近年、新たなビジネスチャンス創出のため、ベトナムの製造企業などに多くの資本を投じている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大にもかかわらず、その投資件数や規模は縮小してはおらず、今後も堅調な成長を維持すると予測されている。

◇M&Aの波
日本企業の投資は、すでにベトナムに進出を果たして長いホンダやトヨタ、ソニー、パナソニックといった企業の進出が有名だが、ベトナムへの進出といった直接投資だけではなく、企業の合併や買収(M&A)、株式市場への投資などの非直接的なかたちでも流入している。コロナ禍にもかかわらず、ベトナムで展開されている日本企業による投資やM&A案件は、現在450件にものぼる。

例えば2020年1月以降だけでも、日本企業が投資にかかわる20件のM&A実施が発表されている。あすか製薬は今年8月、ベトナムのハタイ製薬(Hataphar社)の株式の24.9%を取得。長谷工コーポレーションは、ベトナムの建築会社エコバ社の株の36%を買収した。最近ではエネオスグループの潤滑油製造「JXニッポン・オイル&エネルギー・ベトナム」社が、ベトナムの石油最大手ペトロリメックス社の1300万株を買い、同社の株式占有率を9%に引き上げた。JXニッポン・オイルは2016年に約4兆ドンでペトロリメックス株を購入しており、すでに8%の株式を所有していた。

金融の分野においては、ベトナムの商業銀行中堅、オリエント商業銀行が、8668万株を日本のあおぞら銀行に売却した。これに先立ち、住友生命は4兆ドン以上を投じ、ベトナム金融・保険会社大手、バオベト・ホールディングスの株式を約4100万株追加購入し、同社株の保有率を全体の22.09%にまで引き上げている。

日経アジアによると、日本企業がベトナム企業へと投資や資本投入を行う主な理由は、ビジネス機会の創出を期待してのことだ。一方で、ベトナムにとっても、日本企業からの投資は重要な資本源となっており、今後もしばらくはその傾向が続きそうだという。

計画投資省海外投資局の調査によると、今年10月末現在で、日系企業の進出や日本企業が投資したプロジェクトなどは4595の案件にのぼり、ベトナム国内における総登録資本金は598億7000万ドルに達するという。

ベトナム経済研究所の守部裕行所長は、「ベトナムは日本企業にとってハイリターンが期待できる投資先だ」と話す。過去20年間にわたり、ベトナム経済が毎年前年比5~6%増と高い成長率を維持してきたことが大きい。今日では、ベトナムは製造加工業の世界的中心地に成長しただだけではなく、1億近い消費者を国内に抱える魅力ある市場にもなった。今年10月の菅義偉首相のベトナム公式訪問によっても、多くの日本企業関係者が今後の海外進出先として、ベトナムの優先順位を高めたことは確実だ。

◇さらなる成長への期待
「ベトナムにおける日本企業の投資は、直接的な進出に加えて間接的な投資も、今後さらに増加するだろう」というのが、JETROホーチミン事務所の平井伸治首席代表の予想だ。平井代表によると、日本政府に海外への進出や海外事業拡大を促された日本企業が、今まで中国に投じていた資本を今後、ベトナムへと向けることが考えられ、「ベトナム側も、それを迎え入れる準備を急いで進めておくべきだ」と話す。

JETROの調査では、日本企業の56%が海外への投資を検討しており、このうち41%は進出先の第一候補としてベトナムを選んだという。進出先の人気第2位はインドネシア、3位はタイだった。

ベトナムに進出して事業を展開している三谷産業の金山純ハノイ駐在員事務所長兼ベトナム広報戦略室長によると、ベトナムの海外投資誘致策の魅力が、成功し実を結んでいるとのだという。「ベトナムへの投資コストは妥当だ。そのうえ両国の共通点が多く、相互発展のための協力がしやすい」と分析する。

ベトナム市場における日本企業の存在が、ベトナムにおける中小企業向け、特にサービス産業以外の農業や漁業、さまざまな製造加工業の分野における職業訓練や技術訓練への投資増加を後押ししているのだ。