ベトナムは安全な投資先としての評価を維持しており、新型コロナウイルスの感染拡大や貿易緊張の影響で、中国からシフトした投資を誘致する上で有利な立場にある。

■好調な外国投資
日本の光学機器メーカーのHOYAは、中国から2つの工場が稼働するベトナムへ移管する可能性が高い。日本の経済産業省は、HOYAが、生産拠点を中国から移管するための政府の支援を受けた87の企業のうちの1社だと明らかにした。

ベトナムには、もうすぐ質の高い外国投資の新たな波がやって来ると予測されている。ベトナム商工会議所のヴー・ティエン・ロック会頭は、「サプライチェーンを中国から日本や他国へシフトするために、日本政府の支援を申請した日本企業30社のうち、半数が工場をベトナムへ移管すると決めた。米国企業は、ベトナムでの主要インフラや再生可能エネルギー、デジタル経済事業に関心を持っている」と語る。

また、ベトナム外資系企業協会(VAFIE)のグエン・マイ会長は、「インドやインドネシアと並んで、ベトナムは、資本移動の波が好ましい投資先とみられており、過去2年間で多くの工場が中国からベトナムに移転した」と述べた上で、「成長を続けるベトナムの外資系中小企業に加えて、世界をリードする経済集団も、ハイテク産業、次世代技術、スマートシティ建設、技術・社会インフラといった分野で、数十億ドル相当の投資を行うだろう」と予測した。

計画投資省によると、新型コロナウイルスの感染拡大にもかかわらず、2020年1月から11月20日までの間、ベトナムの外国直接投資(FDI)の追加認可額は264億3000万ドル(約2兆75000億円)に上った。

■ベトナムの優位性
計画投資省によれば、新型コロナによる危機が、世界的な生産拠点の再編を後押しする中で、ベトナムは、米国や日本、韓国の有力企業から優先的な投資先とみなされている。

ベトナムは、政治的安定性、豊富な人材、潜在市場、競争力のある生産コスト、地理的優位性などの面で高い評価を受けている。また、最近調印したEU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)などのFTAが、外国投資家をベトナムに引き寄せている。

一方で、ビナキャピタル・インベストメントマネージメントのドン・ラムCEOは、「政府はインフラ開発を急ぐべきだ。工業地帯に隣接する深水港の建設は、原材料の輸入や最終製品の輸出に関する問題を解決するだろう」と指摘する。また、「産業クラスターモデルには、FDI投資額を最大化し、製品の付加価値を高めて投資家の信頼を得るという2つのメリットがある。投資家は減税を好むが、税の優遇措置はFDI誘致の面でそれほど必要ではない。ベトナムは、資本が来るのを待つのではなく、適切な資本の流れを積極的に選んでいく必要がある」と語った。

ベトナムは、熟練した労働力、便利な物流システム、柔軟な法的環境、安定したマクロ経済の見通しなどから、外国投資家にとって魅力的な投資先になっている。