ベトナム商工省、国際公約に沿いつつ自国の貿易企業保護を強化

さまざまな自由貿易協定が発効される一方で、2021年、世界は保護貿易主義がさらに進むと予想されている。これを受けて、ベトナム商工省は、国際法や国際公約などを遵守しつつ、自国貿易を守るために、必要に応じて貿易救済措置を発動する準備を進めている。

商工省傘下のベトナム貿易救済措置局(TRAV)のレ・チュー・ズン局長は、国内の製造業者保護のための迅速な行動が取れるよう、商工省が現在行っている輸入品向けの貿易救済調査を、加速させるとの方針を明らかにした。

関連当局と連携しつつ、商工省は、関税逃れなどを目的とした原産地証明の偽装や不法な輸入への対策を強化する。同時に、関連する業界の国内企業を育成し、役所や公的機関の活動を強化するとした。

世界貿易機構(WTO)やさまざまな自由貿易協定(FTA)に加盟したのち、ベトナムは市場を開放し、いくつもの輸入品目にかける関税を大幅に削減させてきた。だが、このことは、国内企業が海外企業との激しい競争に直面する事態も招いてもいる。

自国の産業を保護するためのアンチダンピング(不当廉売=AD)措置やセーフガードなどの貿易救済措置の発動は、WTOにも認められている。正しい手法でこれを実施することは、国際社会の一員として当然のことであると同時に、自国産業への打撃を最小限に抑えるためにも必要だ。

2016年から2020年にかけて、商工省は、りん安肥料(DAP)、グルタミン酸ナトリウム、鉄鋼、ポリプロピレンフィルムなどの輸入品に対して、13件の貿易救済調査を実施した。昨年9月には、商工省が、タイ産の砂糖を対象にアンチダンピング調査を開始している。

これまでは、輸入の増加によって生じた損失補填で、国内生産者を守るための十分な効果を得られることが多かった。だが、貿易救済措置局が展開する、国内企業の競争力増強支援などは、まだ十分に追いついていない点も多い。そこで、ズン局長は、「ベトナムが加盟したFTAの規定に合致した、新たな政策や法的枠組みが必要だ」と指摘する。

貿易救済措置についてはベトナムの貿易管理法第5章に規定されているが、これだけでは個別の案件すべてをカバーしきれない。これが、さまざまな調査の制限につながったり、時には救済措置の発動を妨げる要因になったりしている。

貿易の分野では、新たな問題が頻繁に発生しており、関連する各省庁の機関や企業などが、法律や財務の深い知識を持ちあわせていることが強みになる。 昨年、社会経済に打撃をもたらした新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大も、企業支援を妨げる要因になってしまった。

一方で、海外市場において、ベトナムからの輸出品目が貿易救済調査の標的にされるケースが2020年に急増しており、今年もその傾向は続くとみられている。ベトナム製の乗用車用タイヤがその一例で、米商務省の予備調査の対象とされたが、先月、「ダンピングに該当しない」と結論付けられた。

このような状況を受けて、商工省は地元輸出企業に対して、貿易救済措置に関する知識を身につけ、対象となった場合にどう対処すべきか、などの対策をとっておくよう求めた。

一方で、国内製造業が損失を受けることのないよう、輸入される関連製品を注意深く監視し、ダンピングの兆候や補助金相殺措置に当たる行為の、タイムリーな指摘の必要性を強調した。