工業製品の付加価値向上へ、製造業の投資誘致を

ベトナムの工業分野は近年、高い成長を遂げているが、部材等を輸入に依存しているため、国内付加価値率の成長は依然低いままだ。その解決策の1つとして、中国などからベトナムへ、製造業の投資を誘致することが検討されている。

◇低迷する国内付加価値
商工省ベトナム工業庁(VIA)によると、新型コロナウイルスの感染拡大は、海外のサプライチェーンに強く依存し、部品や原材料を輸入に頼るというベトナム製造業の弱点をさらけ出した。GDPに占める工業分野の割合も約18%であり、地域の国々と比較して低い水準にある。加えて、多くの工業分野の能力・競争力は低く、これは製造・加工業の企業数がわずか8万社と少ないことや、財務体質や技術力に限界があることを反映している。

写真㊤=自動車製造・組立業はベトナムの重点産業の1つだ

報告書によると、ベトナムは2019年、約400億ドル(約4兆2000億円)の電子部品を輸入した。主な内訳は、韓国から168億ドル(約1兆8000億円)、中国から138億ドル(約1兆4000億円)、日本から17億ドル(約1800億円)だった。繊維製品、衣料品、レザー製品(靴やカバン)業は、綿花を24億7000万ドル(約2600億円)、繊維を23億ドル(約2400億円)、布地を126億9000万ドル(約1兆3000億円)、原材料を約56億1000万ドル(約5900億円)輸入した。また、自動車製造・組立業も、約40億ドル(約4200億円)の部品を輸入し、中国からの輸入が7億ドル(約730億円)、韓国からが11億4000万ドル(約1200億円)、日本からが7億2000万ドル(約760億円)だった。

VIAのチュオン・タイン・ホアイ長官は、「中国などから材料を購入することによる貿易赤字によって、国内産業の付加価値が大きく下がり、国内外の政治・社会経済の変化に対して脆弱になっている」と指摘する。経済協力開発機構(OECD)のデータによると、過去5年間で、ベトナムの輸出品の付加価値に占める海外の割合、特に中国や韓国の割合は依然大きいが、国内の付加価値率は大きく低迷している。

主要な輸出品である繊維製品と電子機器の国内付加価値率は、それぞれ50%強と37%にとどまっている。ホアイ氏は、「このことは、短期的には生産の発展と経済成長に影響を与えるだけでなく、長期的にはベトナムの工業と国の持続可能な経済発展にも影響を与え続けている」と述べた。

◇優遇策と支援策
商工省は、より高い付加価値を引き出すために、主要な解決策に焦点を当てて、工業・貿易分野の効果的な再構築を目指している。これらの政策では、自動車、繊維製品、靴、電子機器、鉱物、裾野産業といった成長産業が優遇されている。

同省は、地方と国の工業発展計画の一致、とりわけ裾野産業や重要な材料産業(熱間圧延鋼材、繊維製品、染色布、新材料など)の支援計画に対する一貫性や輸入依存度の低減を強く求めている。ホアイ氏は、「中国や他国からベトナムへの製造業の投資を誘致するため、国はさらなる優遇策や支援策を講じるべきだ」と提案した。

2030年までの国家工業発展政策に関する行動計画と2045年までのビジョンによると、工業分野は2030年までに国のGDPの40%以上を占め、製造・加工業で30%、製造業だけで20%以上を占めるとしている。製造・加工業におけるハイテク製品の付加価値は少なくとも45%に達するとされ、工業付加価値の年平均成長率は8.5%を超えると予測される。

2030年までの間、ベトナムは情報技術、通信、エレクトロニクス、クリーンで再生可能なスマートエネルギー、国際標準に沿った農業開発のための製造・加工業の発展に優先して取り組んでいる。