2020年のベトナムのコメ輸出、前年比10%増 コロナ禍も意外な伸び

新型コロナウイルスの世界的感染拡大がもたらす困難にもかかわらず、2020年のベトナムのコメ輸出額は30億ドルを超え、前年度と比べて10%以上増えた。この結果をふまえ、今年のコメ輸出も、右肩上がりの需要と新時代の自由貿易協定の発効によって伸びると見られている。

◇コロナ禍の突破口
2020年の今ごろ、さまざまな困難に直面していたベトナムのコメ輸出が、このように成功に転じると、いったい誰が考えただろうか。当時、新型コロナの影響で、コメの注文も相次いでキャンセルされ、特に中国向けのコメ輸出が大打撃を受けていた。だが、ベトナムのコメ輸出企業は素早く行動し、ベトナムが調印したさまざまな自由貿易協定の利点を最大限生かして危機を乗り越え、新たな市場を開拓していった。

ベトナム食糧協会(VFA)は、昨年1年間のコメ輸出が前年比10%増の総額30億ドル超えを実現したと発表。コメに粉砕した粒を5%混合したコメの輸出価格も、前年度比5%引き上げられ、1トン当たり500ドルになった。これは、2011年12月以降の最高値だという。ST20 やジャスミン米といった品種も人気が高いが、その他のコメでは、1トンあたりの価格が600~1000ドルまでと幅があった。

協会のド・ハー・ナム副会長は、「2020年はベトナムのコメ業界にとっては非常に大きな成功の年だった」と話す。ナム副会長は、その成功が新型コロナの影響で、多くの国で食料需要が高まったこととともに、ベトナム国内での生産される品種が普通腫のコメから、香り米と呼ばれる高級品種へと転換されたことを、理由として挙げた。安定した輸出市場の確保も成功の理由の一つで、伝統的にベトナムからのコメ輸入が多く、輸入総量が300万トンにのぼるフィリピンなどは、今後も良好な輸出先であり続けると見られている。

欧州ベトナム自由貿易協定(EVFTA)をはじめ、昨今あらたに締結されたさまざまな自由貿易協定は、ベトナムが欧州市場に参入する好機となった。

「EVFTA発効前は、ベトナムの欧州向けのコメ輸出は関税障壁にはばまれ、輸出数量は非常に限定的だった」とナム副会長は話す。だが、昨年8月の協定発効後は、ベトナムにかつてより高い取引金額で、大量のコメの発注を受けた。すでにEU市場は、約8万トンのベトナム産のコメを輸入すると約束しており、これを契機に、ベトナムのコメが、目の肥えた欧州やその他の市場に浸透していく道を開くと期待される。

チュンアン・ハイテク農業社のファム・タイ・ビン社長は、昨年、同社が金額にして約2000万ドル相当のコメを輸出したという。EVFTAのおかげでコメの輸出価格は、前年度比で約200万ドル増と大幅に増えた。従来の市場の輸出の維持に加えて、台湾やオーストラリア、韓国と欧州などの新興市場を開拓した。

◇2021年の展望は?
ベトナム食糧協会(VFA)は、ベトナムのコメ輸出の好調が2021年も続くとみている。生産に始まり、加工、流通のあらゆる工程で、コメの品質管理の徹底が必要だ。すでに年明け以降、フィリピンやアフリカ諸国が相次いで輸入契約を結んでいるほか、長粒米の高級品種である香り米や、もち米など、ベトナムの強みである品種の需要増が、多くの国々で見られるからだ。

自由貿易協定を結んだ諸国・地域への輸出は特に期待もてる。ベトナムと自由貿易協定を結んだユーラシア経済連合(EAEU)がその一例で、10000トンのコメ輸入の見積もりをベトナムに申し入れている。その内訳は、アルメニアが400トン、ベラルーシ共和国が9600トンだという。さらに英国との間で締結した英国ベトナム自由貿易協定(UKVFTA)でも、コメの輸出量の上限がなくなり、関税も撤廃される。

このような好機を生かすために、インティメックス・グループやロックチョイ社会、Vライス・カンパニーなどのベトナムの主要なコメ輸出会社が、英国を中心に新たな顧客開拓に余念がない。

商工省も、コメの輸出業者に対して、市場の要求などのほか、自由貿易協定によって撤廃された規則や関税障壁などについて、適時情報を提供する方針だ。また、新たな市場や顧客への橋渡しとして、さまざまな貿易や輸出促進活動を展開していく考えだ。