ベトナムの株式市場、新たな機会の到来

新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響にもかかわらず、ベトナムの株式市場は昨年も、比較的安定した運営を維持し、流動性を向上させた。昨年末には、首相がベトナム証券取引所の設立を承認するなど、2021年も新しい機会の提供によって株式市場が発展すると期待されている。

◇安定した成長
ベトナム国家証券委員のチャン・バン・ズン委員長によると、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で、2020年のはじめごろ、ベトナムの株式市場は海外投資家らが売りに転じた。しかし年末には、VNインデックスは年初と比べ14.9%上昇。株価が底を打った昨年3月下旬と比べると、67%の回復となった。

株式市場の流動化をみると、平均取引額が約74兆ドンにまで改善され、1日の平均時間内取引が11月には10兆ドン、12月には14兆8000億ドンとなった。また、ベトナム株式市場の時価総額は、ベトナムの国内総生産(GDP)の約84.3%に達した。

2020年に株式市場を通じて集まった総資本は384兆ドンにのぼり、前年に比べて20%増加。新型コロナの状況かにもかかわらず、大手民間企業の84%は黒字を維持し続けた。

債券とデリバティブ(派生証券)市場も、目覚ましい成長を見せた。ベトナム国庫による国債発行は昨年、333兆ドンに達し、前年と比べ64%増加。企業債は400兆ドン、GDPの14.7%だった。一方で、2019年に4.51%だった預金金利は昨年、2.83%に引き下げられた。

これらの成果は、市場を支援する政策の発行と、企業が直面する困難克服を支援したベトナム国家証券委員会の努力結果とされた。

◇新たな機会の到来
当初、新型コロナの感染抑制に成功したことや、ベトナム経済の今後の発展の可能性は、投資家らによって高く評価されている。だが、新型コロナの感染がどのように制御されるかによって、今年のベトナム株式市場が困難に直面することもあり得る。じっさい、今年1月末には、米国株の下落と国内での感染再燃などの影響を受け、ホーチミン証券取引所が過去最大の株価下落を記録した。世界的感染の長期的影響への警戒が、ベトナムでも必要となっている。

ただ、ベトナムの株式市場には新たな発展の機会もある。

グエン・スアン・フック首相は昨年末、ホーチミン証券取引所とハノイ証券取引所を統合した「ベトナム証券取引所」の設立を承認した。また、今年1月1日に正式に発効した新たな証券法、投資法、企業法などによって、ベトナムの投資をめぐる法的枠組みと投資環境がいっそう透明化された。

ペトロベトナム証券(PSI)のダオ・ホン・ズオン分析センター所長は、「世界じゅうで政府と中央銀行が、コロナ後の経済成長を促進するための金融政策を拡大し、景気刺激策をとっている。今後、ベトナムの株式市場は、これらの恩恵を受けることができるだろう」と話す。

国内でも、金利の引き下げや金の価格上昇の停滞傾向などによって、銀行預貯金や金の購入といった投資の魅力が減退しつつあり、投資資金の流れは大きく株式市場へと傾いている。

ベトナム国家証券委員は、今後も市場の弱点に対処し、ベトナムの株式市場を、金融が未発達の「フロンティア市場」から「新興国市場」へと成長させることを目指している。株式市場の発展策の追加実施し、株式市場の回復力をさらに向上させると同時に、株式取引法の詳細な解釈の提示などで、法的枠組の整備を促進するという。

ディン・ティエン・ズン財務相は、株式市場がベトナム経済に資本をもたらす重要な場所であり、マクロ経済の管理のための有用な手段であるとして、「規模の点でも、質の点でも、2021年はベトナムの株式市場が成功する年になる」と期待を示した。