ベトナム株式市場、今年度の見通し「明るい」 専門家らが期待

ベトナムの証券市場は、昨年8月以降、株価上昇傾向が続いていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の第3波などが引き金となり、今年年初、一時的に調整局面に入った。だが下落した株価も2月以降は回復。ベトナム株価指数(VN-Index)が1100に戻したことから、専門家らは、今後再び成長傾向が続くとの楽観的予測を示している。

◇回復傾向に増す自信
今年年初、株価上昇が失速し、下落へと転じたのは、新型コロナの影響に加えて、ベトナム株価指数が1200に近づき、投資家らが慎重になったことや、証券会社が未払いローンを減らそうとリスク管理を始めたためだ。

その後の新型コロナの感染制御に比較的効果があったことや、ベトナムでもワクチン接種が始まる見通しがたったことなどから、ベトナム最大手のSSI証券は、ベトナム株価指数が3月中にも1175~1200に達すると予想している。

専門家らは、海外からベトナム向けの資本流入が今後数カ月間で回復すると予想。2020年は外国人投資家による株の売り傾向が続いたが、一方では上場投資信託(ETF)の買い入れがあり、現在ホーチミン証券取引所(HoSE)の上場投資信託の約90%が海外の投資家の保有だという。ベトナムの上場投資信託は、外国人投資家の参入制限が解除されれば、さらに拡大すると予想されているのに加え、ベトナムの株式市場が近く「新興市場」に昇格するとの見通しもあり、こちらも期待材料となっている。

◇フィリピンに追いつけ、追い越せ
スイスに本部を置く世界的金融機関、UBSウェルス・マネジメントのアジア太平洋地域担当、ケルビン・タイ主席投資オフィサーは、「ベトナムは潜在的な経済発展の可能性があるとして、支持されている市場だ」という。その株式時価総額は、「今年なかばにも、フィリピンに追いつき、追い越すであろう」と期待を語る。

日興アセットマネジメントのファンドマネージャーであるピーター・モンソン氏の意見では、他地域よりも多い政府予算や経済刺激策の導入、そして世界的な輸出需要の増加も手伝って、ベトナムを含めたアジアの株式市場は、新型コロナの感染拡大前と比べ、より地位を高めているという。

台湾系のベトナム・ユアンタ証券、レ・ミン・タム会長は、「ベトナムはコロナ禍の2020年にも国内総生産(GDP)のプラス成長を実現し、しかもそれが3%近いという成果を達成した、数少ない国のひとつだ。いまやベトナムは、世界経済、特にアジア経済の回復にとっての明るい材料となっている」と解説。低金利やさまざまな投資刺激策も、昨年のベトナム株式市場の成長を促した重要な原動力だったという。

投資機関の予想では、上場企業の業績も好調で、今年度の利益も前年を大きく上回るとされる。また、ベトキャピタル証券(VCSC)は、今年の一株当たり純利益(EPS)を、前年比30%も増加すると予想している。EPSの前年度比増加にはその他の証券会社も同意見で、その率をVNダイレクト社は22-24%増、BSC(ベトナム投資開発銀行証券)は22%増、韓国系のミレー(未来)アセット証券は19%増と予想している。

ベトナムの株式市場がこれまで、アジアの他地域の市場と比べて低く評価されていたことから、多くの投資家は、ベトナム株式市場が今年、さらに大きく成長するだろうと期待している。法的な障壁を取り除き、市場の透明性を実現することが、ベトナムの株式市場が激しい競争を勝ち抜くために必要な課題となりそうだ。