2021年の貿易成長目標4~5%に 近年になく低い設定、商工省

ベトナム商工省貿易局は、今年の輸出成長目標を、前年度比4~5%増に設定した。チャン・タイン・ハイ貿易局副局長が発表した。近年になく低い設定は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大や国際貿易の状況変化など、現在直面する困難や今後の障壁の可能性を検討した結果だという。

◇経済回復の兆し
ハイ貿易局副局長によると、今年1月1日から2月15日までのベトナムの輸出総額は380億ドルに達し、前年同期と比べ36%増加し、ベトナム経済は回復の兆しを見せた。一方で、同時期の輸入額も同25%増だった。

昨年、10%近く輸出を減らした繊維製品と衣料品、靴などの輸出額は、今年1~2月で回復に転じた。1月と2月の繊維製品と衣類品の輸出額合計は、26億ドルとなる見込みで、これは昨年同期比の約3.3%増となる。

国営企業で繊維最大手、ビナテックス(VINATEX)のレ・ティエン・チュオン会長は、「2021年は価格が低迷し、ファッション製の高いものよりも実用重視のシンプルな商品が好まれる傾向にある。生産が需要を上回ることも予想され、まだ難しい状況が続く、不安定な一年となるだろう」と予測。その状況下で、繊維・衣料業界は、今年1年間の輸出目標を、390億ドルに設定した。

スマートフォンや機械、機械部品や電子部品などの需要の高まりから、これらの製品輸出は増えている。新型コロナの影響によって多くの国では、これらの製品製造が制限されたためで、ベトナムにとっては輸出機会の増加につながった。また、農産物の1月~2月15日の輸出も、前年同期比5%増となった。

◇適切な目標設定
このように、2021年の年初には前向きな経済回復の兆候が見られた。にもかかわらず、商工省の輸出成長目標の設定は、4〜5%に引き下げられた。これは、7%だった2020年など近年の目標値と比べると、かなり低い設定だが、「新型コロナの影響だけに起因するものではない」と商工省は説明する。世界銀行の統計によれば、2017年には16.7%増加した輸出が2019年には6.7%に落ち込むなどしており、このような国際的なビジネス環境の不確実性も考慮した結果だとした。

加えて、過去10年間の世界的な保護貿易主義の高まりは、ベトナムを含む世界の国々の貿易に深刻な影響を及ぼしている。新型コロナの世界的な感染拡大が予見されなかったことは、経済発展に向けたシナリオが、自然災害や疫病のまん延、紛争など、予期せぬ要因に備える必要があると、国際社会に再認識させた。世界の経済共同体へ積極的に参加しており、海外市場への門戸を開いているベトナムも例外ではなく、ハイ貿易局副局長は、「これらすべての要因を考慮すれば、商工省が以前より低い成長目標を設定したことは、適切である」と説明した。

新型コロナは少なくとも今後数年間にわたり、経済的な影響を及ぼすとされている。市場は短期的にはコロナ前の水準の活動には戻らないだろう。それでも企業は、昨年、比較的効果的であった手段を用いて、活動を継続させる必要がある。

「ベトナムは多くの国々との自由貿易協定に調印した。今はベトナム企業が、これらの協定がもたらすチャンスをアドバンテージにできるよう、準備すべき時だ」と、ハイ貿易局副局長は断言する。商工省でも、ベトナム企業にとってよりビジネスがスムーズになるよう、行政手続きの省力化などに力を入れるという。