ベトナムのプラスチック製品、対EU輸出拡大に期待=EVFTA発効背景に

◇域外供給元のトップ10に
ベトナムのプラスチック輸出において、対EU輸出が全体の18.2%を占めている。昨年8月に発効したEU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)は、プラスチック分野の輸出・投資を促進する新たな機会をもたらすだろう。

写真㊤=国内のプラスチック業界は近年、大きく拡大している

ベトナム税関総局のデータによると、プラスチックの輸出額は近年、年平均14〜15%の成長を続けており、輸出する市場も150を超えている。国際貿易センターによると、EUのプラスチック製品は現状、輸入品に比べて優位に立っているが、(これらの輸入品は)アンチダンピング税(4〜30%)の対象外であるため、ベトナムのプラスチック包装製品は、タイや中国などの他国の製品より競争力があると考えられる。

ベトナムは2019年に、EUのプラスチックの域外供給元トップ10に入った。同年、EUのベトナムからの輸入額は9億3060万ドル(約1020億円)に達し、前年比で5.2%増加。EUによるプラスチック輸入額の0.4%を占めた。主な輸入先は、ドイツ、フランス、イタリア、英国、ベルギーだった。

◇柔軟な原産地規則
ベトナム商工省欧米市場局によると、2020年8月にEVFTAが発効すると同時に、大部分のベトナムのプラスチック製品に課されていた基本税率(6.5%)はゼロになり、関税割当制度も適用されなかった。

関税の優遇措置を受けるためには、輸出業者はEUの原産地規則を遵守しなければならないが、プラスチックやプラスチック製品に適用される原産地規則には柔軟性があり、生産者は原産地証明書のない材料を最大50%まで使用することができる。ベトナム国内のプラスチック会社は、材料を依然輸入に頼っているため、こうした柔軟な規則はプラスチックの対EU輸出に有利に働くだろう。現状、国内の材料供給は需要の15〜30%にとどまり、ベトナムのプラスチック業界は、国内や輸出市場向けに必要なPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PS(ポリスチレン)といった材料を何百万トンも輸入しなければならない。

また、同局によると、EUでPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いたプラスチック包装が拡大していることも、ベトナムのプラスチック業界には逆風である。というのも、輸出品では、従来のプラスチック材料を用いた包装製品が依然大きな割合を占めているからだ。

しかしながら、ある輸出業者は、「一部の国内企業は、EUを含めた主要市場への輸出を想定してPETの生産に乗り出している。(高付加価値のある)エンジニアリングプラスチックも、欧州の輸入業者の厳しい技術要件を満たせば、EUへ輸出することも可能だ」と期待を込める。

EVFTAは、ベトナムのプラスチック業界に、EUやEU以外の投資家を呼び込む機会をもたらしている。