増えるオンライン取引、銀行のデジタル化急務

ベトナムの銀行は、金融商品やサービスの提供において、高度な先端技術の導入を急いでいる。具体的には、IoTやAI、機械学習、アドバンスド・アナリティクス、分散型台帳技術(DLT)、クラウドコンピューティング、アプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)などが挙げられる。

◇デジタルバンキングの進展
ベトナム国家銀行(SBV)傘下の銀行戦略研究所の元副所長であるファム・スアン・ホー氏は、「デジタル技術の進展に伴い、銀行が顧客にサービスを提供する方法が変わってきた」と指摘する。また、「フィンテックの出現により、銀行はビジネスモデルの見直しを迫られている」とも語る。SBVの調査では、デジタル化によって、銀行は事業コストの6〜7割を削減でき、顧客に対してもより良いサービスを提供できるようになるとしている。

大手行のベトコムバンクは、デジタルバンキングアプリの「VCB Digibank」の運用を開始し、またベトナム投資開発銀行(BIDV)は、「BIDV iBank」アプリを用いた独自のデジタル・トランスフォーメーションキャンペーンを開始した。ある調査によると、ベトナムの銀行の93%が、技術革新の分野に投資を行っているという。デジタルバンキングは、未来の銀行システムを担うものであり、銀行は戦略的、長期的、かつ明確なデジタル化へのロードマップを必要としている。そして、強力なデジタルエコシステムを持つ銀行は、他行に対して大きなアドバンテージを得る可能性がある。

最近では多くの銀行が、スマートで使いやすいアプリを構築している。口座の開設や管理ができる無料のプログラムを導入し、オンライン本人確認システムである「eKYC」を用いて口座開設ができるなど、デジタル化へ向けた努力を続けている。しかし、こうした取り組みの一方で、銀行業での急速な技術の進歩は、法律の改正を必要とする。

◇生き残りをかけて
アーンスト・アンド・ヤング・ベトナムのグエン・トゥイ・ズオン副社長は、「ベトナムの銀行のうち42%が、デジタル・トランスフォーメーションへの準備ができており、28%はそれぞれのビジネスにデジタル化戦略を盛り込んでいる」と述べる。

しかしその一方で、「ほとんどの銀行はデジタルバンキングへの明確なビジョンを持っておらず、ビジネスとデジタル化戦略をどう結び付けるかに適切な注意を払っていない。さらには、旧態依然とした業務体質が、デジタル化の障害にもなっている」とズオン氏は言う。

銀行は経済の重要な要素であり、デジタル経済を押し上げるために、銀行は顧客のデジタルリテラシーを高める方法を探す必要がある。経済のデジタル化は、銀行のデジタル化なくしては実現しない。

ベトナム銀行協会(VNBA)のグエン・トゥアン・タン事務局長は、「新型コロナウイルスによって、銀行のオンライン取引が急増した。銀行が生き残り、成長するために、デジタル化の加速は不可欠である」と語った。

KPMGのレポートは、今後10年間で、銀行業界には顧客中心主義に基づく、多くの変化が起こると指摘している。