〝ベトナム版アマゾン〟の躍進 企業価値は1000億円

〝ベトナム版アマゾン〟と呼ばれる電子商取引(EC)のリーディングカンパニー、Tiki(ティキ)の快進撃が続いている。創業から10年余り。今やあらゆる商品やサービス扱う企業に成長し、企業価値は国内のユニコーン(非上場のベンチャー企業)で2番目の規模となる10億㌦(約1090億円)と推計されている。昨年は、急成長するネットスーパーの分野にも進出。「最低コストで最良のサービス」をモットーに事業拡大を進めている。

写真㊤=サービス拡充に向け、Tikiは様々な企業と提携を進めている

同社は2010年、洋書のオンラインショップとしてスタート、現在は日用品からデジタルサービスまで、ありとあらゆる商品を扱っている。社名の由来は、「tìm kiếm 」(探す) and「tiế t kiệm」 (貯める)の2つのベトナム語に由来。あらゆるものを最安価格と最短時価で顧客に届けることを創業以来のモットーとしている。

マーケティングリサーチ大手、ニールセンによると、現在は、国内数百万人の顧客を有する最も信用のできる、マルチカテゴリーのECのプラットフォームに成長。通販サイトや小売業のTiki・トレーディングでは、書籍や新聞から家電品、衣料品、化粧品にいたるまで国内外のあらゆる商品のほか、美容からデジタルまで幅広いサービスを提供している。

物流を担うTikiNOW(ティキナウ)・スマート・ロジスティクス(TNSL) は、総面積6万平方㍍の規模を誇り、オペレーションセンターと12の配送センターは人工知能(AI)を導入。国内のどこにでも2日以内に商品を届けるサプライチェーンを構築している。中でも最速のサービス「TikiNOW 2h」では数百から数千の商品を、注文から2時間以内に届けることができる。

新型コロナウイルスが猛威をふるった昨年は、事業展開を加速。5月には、クレジットカード「サコム銀行 Tiki プラティナ カード」のサービス開始に向けて、サコム銀行とVisaの2社と提携。同時にベトナムEC協会(VECOM)などと協力しデジタル化とECの持続的に向けた50万社支援プロジェクトに乗り出した。

さらにネットスーパーTikiNGON(ティキンゴン)を立ち上げたほか、8月には同日配送や顧客が配送日時を選択できるサービスをスタート。11月には、科学・技術省のテクノロジー起業商業化開発局などと協力し、起業支援の一環としてTikiの通販サイト上に商業ブースを設ける契約を結んだ。


Tikiの倉庫

英調査会社ユーガブ(YouGov)や経営コンサルティングKPMGのランキングで、TikiはベトナムでトップのECサイトとしてランキングされている。創業から10年間にわたり、同社はオープンなプラットフォームの構築に力を入れてきた。アプリ内アプリに関しても、開発者やベンチャー起業が容易に既存のプラットフォームに参入できるよう、技術インフラの整備にも投資。 プラットフォーム利用者の価値を最大限にして「ウィンウィン」の関係を構築し、すべてのパートナーが何百万という購入者と販売者につながり、最低コストで最良のサービスを享受できることを目標に掲げている。

同社は「われわれは、サービスのスピードアップのために、サプライチェーン全体の接続をさらに強化したい。そして、コストを最小化し、消費者と企業の双方にベストなサービスを提供したい」としている。