1~5月の特定原産地証明発行、100万件に迫る 商工省

ベトナムの認可機関や組織が、今年1~5月に発行した輸出商品対象の特定原産地証明(C/O)が、近く100万件に達する勢いだと、商工省がこのほど発表した。特定原産地証明は、自由貿易協定締結先向けの輸出商品が関税上の優遇措置を受けられるというもので、前年同期と比べ、数量で約9%、商品価格で約6%も増加したという。

◇増加傾向の特定原産地証明
昨年一年間に、輸出された特定原産地証明付きの輸出品の総額は、約528億ドルに達した。商工省は政令 15/2018/TT-BCT 号を発効させ、特定原産地証明の付与と申請企業の育成などについて明確に規定。原産地証明の発行や付与の手続きも簡略化を進め、さらに多くの企業の証明取得を促している。

商工省によると、関税上での優遇措置を受けられる特定原産地証明を活用した輸出品は、自由貿易協定を結んだ海外市場向け輸出総額の約33%に相当した。国別の割合でみると、韓国向けが最も多く輸出全体の52.01%を占めた。これに日本(約38.35%)、中国(31.6%)が続いた。商品別でみると原産地証明を受けた商品の筆頭は「繊維・衣類」の分野で、輸出の約58%が原産地証明を受けていた。また、材木や木工品は全体の32%、魚介類の68%が原産地証明を得ていた。特定原産地証明の申請数自体も、全体的に右肩上がりだという。

これに対して、特定原産地証明を得ていない67%の輸出品も、実は高い関税を免除されているケースが多いのだと、商工省は言う。特定の国に対して有利な待遇で貿易を行う「最恵国待遇(MFN=most favored nation)」の対象にベトナムがなっているために、関税が優遇されるのだという。

この場合、企業はわざわざ手間のかかる特定原産地証明を取得しない。例えば、オーストラリアとニュージーランドは、魚介類の輸入に関して、ベトナムに最恵国待遇を採用している。これでゼロ関税となるため、ベトナムのメーカーは、この二国に輸出する場合は、特定原産地証明の申請や取得に時間をさかない。

◇多様な証明、ニーズに合わせて賢く活用
一口に特定原産地証明といっても、輸出先などによって、さまざまな原産地証明が存在する。例えば、中国ASEAN自由貿易協定(ACFTA)の枠組のなかで関税優遇を得るには「フォーム E」と呼ばれる輸出国政府が発行する原産地証明書が必要だ。中国向け輸出全体の31.7%にあたる輸出額155億ドルは、このフォームE の取得によるものだった。

また、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)の関税引き下げ適用に必要な原産地証明書「フォーム D」は、ASEAN諸国への総輸出額の約39%に相当する企業が取得。その輸出総額は89億9000万ドルだという。対日貿易では、ASEANと日本の間での同様の証明(フォームAJ)があり、58億ドルの日本向け輸出額の30.7%に相当している。日越間貿易でも原産地証明(フォームVJ)が15億2000万ドル(全体の8%)となった。

このほかにも対韓国向けの原産地証明を使った輸出も多くベトナム―韓国間のフォームVKは50億8000万ドル、ASEAN韓国間ではフォームAKで48億7000万ドルの輸出があった。

ASEAN物品貿易協定下でフォームDを活用した原産地証明は、貿易総額で約89億7000万ドルに達したという。だが商工省によると、2015年以来、この形態での貿易は飽和状態で、大きな変化はないという。というのも、ASEAN諸国の中でもシンガポールやマレーシア、インドネシアなどでは、最恵国待遇のベトナムは税率が0%とされたからで、これらの国への輸出のためにわざわざ原産地証明をとる必要がないからだ。

環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)の加盟国への輸出でも、原産地証明の取得はそう高くない。貿易相手国のほとんどがすでにベトナムと個別に自由貿易協定を結んでおり、これらの個別の協定の方が原産地証明の適用基準などが緩やかで、関税優遇率も高いためだ。

これに対し、ベトナムとこれまで自由貿易協定を結んでおらず、CPTPPが初の自由貿易協定となるメキシコとカナダに関しては、原産地証明を使った貿易が多かった。対メキシコでは8億6730万ドル、対カナダでは4億200万ドルが原産地証明を活用しての輸出で、それぞれの国向けの輸出全体のそれぞれ、27.45%と9.2%を占めた。

欧州ベトナム自由貿易協定(EVFTA)では、欧州連合とベトナム間の独自の原産地証明「EUR.1」が、欧州27カ国と英国向けの輸出で適用されたが、この証明を得た輸出額は、実施から5カ月間で、26億6000万ドルに達した。これは今年1~5月の総輸出額の約14.83%に相当する。対EUの場合、一般特恵関税制度とEVFTAの両面から恩恵を受けることができるため、特定原産地証明を活用したこの輸出総額は今後、ますます増える可能性が高い。多くの企業は、新たに設けられた自己認証制度「REXシステム」を活用して、特恵関税制度とEVFTAの原産地証明の両方を申請し、EU向け輸出の優遇関税を最大限に享受している。