繊維アパレル業界、第1四半期は好調、 価格下落と労働力不足が今後の懸念

ベトナム繊維アパレル協会(VITAS)はこのほど、ベトナムが年の第1四半期に、繊維と衣類の輸出額が約117億4700万ドルに達したと発表した。新型コロナウイルスの世界的感染拡大にもかかわらず、前年同期比13.33%増と好調だったにもかかわらず、業界では、今後予想される製品の価格下落や労働力不足といった課題に悩んでいるという。

◇受注は右肩上がり
今年第1四半期の輸出額の内訳をみると、衣類が87億6600万ドル、繊維が16億3800万ドル、布地が7億4000万ドルだった。米国、欧州、日本が、ベトナムの繊維製品や服の最大の輸出先だった。

今年、特徴的なのは、多くのベトナム企業に今年第3四半期まで途切れず注文が入っているということだ。なかには、年末までの生産注文を受注したという企業もある。

フエ・テキスタイル・ガーメント社のグエン・ヴァン・フオン社長によると、同社の第1四半期の売り上げは、前年同期比40%増の3000億ドンで、年間目標の35%に達したという。このうち、衣類の輸出額は1200万ドルで、年間目標の4割を達成した。これは、昨年同期よりも65%増えたという。

ニンビン・ガーメント社のファム・ティー・ラン・ホン社長も、「受注は好調で、第2四半期の9月まで、大量の注文が入っている」と話す。

専門家は、主要な海外市場におけるベトナム製衣類や繊維製造業界の存在価値と地位は、世界的なコロナ禍にあってもほとんど影響を受けていないばかりか、評価が高まる傾向にあると分析する。

特に欧州ではその傾向が顕著で、バングラデシュ製の綿Tシャツ100キロの価格は第1四半期に前年比より1%下がったのに対して、同等のベトナム製品は価格が3%上昇し、100キロ2157.9ユーロとなった。同様に婦人用綿Tシャツ100キロではバングラデシュ製が1329.5ユーロ(前年比7%減)、ベトナム製は前年と同じ2157.8ユーロだった。

米国においても昨年、バングラデシュ製の綿Tシャツ12枚の価格は20%下落の17.99ドルだったが、ベトナム製の価格減は17%にとどまり、価格は31.9ドルだった。バングラデシュ製セーターの価格も2%減だったが、ベトナム製は46.9ドルの前年度価格を維持した。

ベトナムの繊維業界は近年、製品の品質を向上させ、受注から納品までの時間を短縮するために、製造の自動化や技術の向上に注力している。国際市場での高評価は、その成果が表れた結果とみられる。

◇人材の不足に直面
受注が好調であるにもかかわらず、ベトナムの繊維やアパレルメーカーが先行きの心配をぬぐえないのは、製品価格が下落する可能性を秘めていることに加え、労働力の不足が大きな懸念材料となっているからだ。

フエ・テキスタイル・ガーメント社のフオン社長は今後、価格の変動のほか、製品の種別や受注内容も変化すると見ており、契約の形態においても、貨物を本船に積み込むまでの通関費用などを輸出者が負担する本船渡条件(FOB)が減るものと予測している。フオン社長は、「今後は第1四半期と比べ、一般的に、売り上げや輸出額は下がるだろう」と話す。

これもコロナの影響だが、世界的な外出自粛の結果、従来のベトナムの主力製品であったシャツやスーツ、ズボンの需要の減少し、その穴埋めとして多くの企業が、ニット製品に製品製造を移行した。このことで、潜在的な生産性の低下と収益減が生じる可能性がある。

加えて、大きな課題となっているのが、人材不足だ。アパレルメーカーのガーメント10社では、第2四半期の受注製品を製造するための職員の追加採用で大きな障害に直面しているという。同社は「このままでは、受注通りに製品を仕上げ、今年の収益目標を達成するのが難しくなる」と懸念している。

人材や労働力の不足は、多くの繊維・アパレルメーカーにとっての大きな課題だ。ホーチミン市の衣類繊維刺繍ニット製造協会(AGTEK)の会長であるサイゴン3ガーメント社のファム・スアン・ホン取締役会長は、「新型コロナが影響した昨年、受注がなかったために、多くの企業が生産規模を縮小し、職員を解雇せざるを得なかった。それが、今になって響いている」と話す。

今年になって、受注は回復したものの、企業は労働者の確保の難しさに直面している。それでも、今年は、ベトナムの繊維アパレル業界は成長しており、「今年度の目標である390億ドルの輸出額は達成できるだろう」とベトナム繊維アパレル協会のブー・ズック・ジアン会長は見ている。

その実現のために、同協会では、国内の業界企業に対し、市場の変化を注意深く観察し、変化に応じて生産を適応させるよう助言。一方で、新規の注文を開拓しながら、自然や環境に優しい生産の実現を目指すことで持続可能な発展を実現するよう呼びかけている。