域内貿易の促進とデジタル化加速を APEC貿易担当大臣会合 ポストコロナで提言

新型コロナウイルスの発現から一年以上が過ぎても、感染は予測不可能な複雑な方法で広がり続け、世界中で前例のない社会的経済的不安定を引き起こしている。経済回復に向けて、さまざまな貿易障壁の除去を検討するため、アジア太平洋経済協力会議(APEC)に加盟する21カ国は今月5日、APEC貿易担当大臣会合(MRT 27)をオンライン会議で実施した。

◇スムーズな物流実現を
各国が新型コロナワクチンを製造し、国民への接種を進めるなか、感染症封じ込めの成功なども手伝い、世界経済は前年よりも回復が顕著だ。昨年4月に発表された国際通貨基金(IMF)の報告書は、今年の経済成長を3.3%減のマイナス成長と予測していたが、これに反し、今年の世界経済の成長率は6%増となる見込みで、来年も4.4%増になると予測だ。専門家らのAPEC域内の分析も同様で、昨年は1.9%減だった 域内の国内総生産(GDP)成長率は、今年は5.7%増、2022年には4.1%増になる見込みだ。

APEC貿易担当大臣会合後の共同声明で、加盟各国は、貿易促進の障壁となる事象を取り除いていくことで一致した。ニュージーランドのダミアン・オコナー貿易輸出成長大臣は、「新型コロナの感染拡大は、われわれの相互依存の現状を強調し、貿易や需給体制を、自由で開かれた状態に保っていくことがいかに重要かを示した」と述べた。

ベトナムのグエン・ホン・ジエン商工相は、参加各国に対し、域内の商品とサービスのサプライチェーンを効果的に運営するため、率先して取り組むよう訴えた。「昨年の会合でAPEC閣僚が合意したように、必需品の流通を促進するためのより大きな努力が必要だ」とジエン商工相は強調した。

新型コロナが終息していない現状では、このような努力がワクチンの供給を容易にすることにもつながる。輸出規制や関税などの貿易障壁は、世界の開発途上国が新型コロナワクチンを入手することの妨げとなっているからだ。

現在、APEC加盟国間でみると、ワクチンに適用される関税税率は、輸入価格の約0.8%にとどまっている。しかし、消毒用アルコールや冷蔵設備、包装資材や保存用の資材、バイアル、ゴム製キャップなどワクチン供給に必要な医療資材などは、平均で5%超の比較的高い関税税率であり、さらに世界の一部の国々はこれらの税率を30%にまで引き上げる可能性さえ示唆しており、間接的に発展途上国へのワクチン輸入を妨げている。

そこで、APEC加盟国は、新型コロナワクチンの特許権一時放棄について世界貿易機関(WTO)と交渉することに積極的な姿勢だ。できるだけ早い時期に、遅くとも11月下旬予定のWTO第12回閣僚会議で、その交渉に取り組む予定だ。

◇デジタル化の促進を
ジエン商工相は、経済成長と社会的安定の維持のために、APEC加盟各国に自由で開放された貿易と投資を継続し、地域統合を促進させ、アジア太平洋地域におけるAPECの主導的役割を確実に発揮する必要があると主張し、そのための手法として、電子商取引やデジタル化改革の重要性を説いた。

ジエン商工相は、「創造的な改革や、インターネット上などでの商取引を推し進め、効果的なデジタル上の連携を実現できる適切なインフラ整備を確実にする必要がある。また、企業や人材、特に社会的弱者になりやすい女性や、身体に障がいを持つ人たちの、デジタル能力を向上させることも必要だ、これらの目標実現のために、APEC加盟各国は、さらに協力を深めるべきだ」と強調した。

日本の鷲尾英一郎外務副大臣は、ジエン商工相の主張に賛同し、APEC域内経済圏は、新型コロナ終息後の地域がよりよくなるために、信頼に基づくデジタル情報の自由な交換を促進する必要があるとした。 また鷲尾副大臣は、「デジタル化を加速させたのは皮肉にも、新型コロナの世界的感染拡大だった。今後は、デジタル社会の世界的なルールの構築が必要だ」と述べた。

APEC閣僚はまた、効率的で包括的な、格差のないデジタル経済を促進するためにも、2017年にベトナム主催で開かれたAPEC首脳会議で採択された「インターネットおよびデジタル経済ロードマップ」の実現を加速することで合意し、新技術の適用を促進し、事業開発を後押しすることを目指し、一致団結する。

APEC加盟国は、消費者と企業間の相互信頼を強化するために、情報交換を促すことで合意したほか、新型コロナの感染拡大を背景に、デジタル上での貿易展開を促進することで合意に至った。