目指せ、ベトナムのテスラ社 躍進する電動バイク製造ダットバイク社

ベトナムの電動バイク製造ベンチャー、ダットバイク社がこのほど、シンガポールに本拠地を置くベンチャーキャピタル、ジャングルベンチャー社から、2600万ドルの投資を得た。ベトナムをはじめとする東南アジア各国で環境に優しい移動手段を大量生産するという目標に向かって躍進している。

ダットバイクを創設したグェン・バー・カイン・ソン最高経営責任者(CEO)は、コンピューター科学の学位を取得後、アメリカ、シリコンバレーで働いていたが、元エンジニアだ。2018年に、故郷で事業の立ち上げに着手した。

100万ドルの資本を元手に、ソンCEOは工場を買収し、ホーチミン市に販売店を開店した。最初のバイクが顧客の手に渡ったのは2020年のはじめだった。当初は1カ月の販売台数は数百台にすぎなかったが、人気に火が付き、昨年11月以降は収益が毎月35%増加するなど、事態は大きく変わった。

同社の製品である電動バイクの「ウィーバー(Weaver)」は、従来のガソリン駆動型バイクと十分競争できる商品として開発されており、東南アジアでは重要なセールスポイントである2人乗りタイプに作られている。

通常の家庭用電源でも、2時間ほどでフル充填でき、1回の充填で100キロを走行できる。次のモデルでは1回の充填で200キロ走行が可能になる見込みだ。

バッテリーは、テスラ社が使っているのと同じ、最新型のリチウムイオン電池を使用している。リチウムイオンは寿命が10年と長いうえ、現在使われているなかではもっとも安全なバッテリー用化学物質で、リサイクルゴミとしての廃棄も容易だ。

製品は3990ドン(1712ドル)という手頃な価格で、市場に出回っている電動バイクの3倍の性能を誇り、燃費効率も2倍優れているという。

ソンCEOは、「弊社の電動バイクは、出力でも走行距離でも、ガソリン使用のバイクに遜色ない。搭載されている5000ワットのモーターは、動き出しから時速50キロに加速するまでたった3秒しかかからない」と胸を張る。さらにはブレーキメカニズムにも工夫をこらしており、「ベトナム名物の渋滞に合う走りと制御が可能だ」と話す。

◇投資の誘致へ
ダットバイク社の製品は、バッテリーを含め、制御システムやエンジンなど、ほとんどの部品が国内で生産されている。そのため、運輸省によって「ベトナム製品」との認可を受けている。これは、ジャングルベンチャー社が投資を決めた理由のひとつだったという。

ジャングルベンチャーの創設者、アミット・アナンド氏は「ダットバイクは、他のプロジェクトとは違い、ごく初期の段階で共感し、投資を決めた企業だ。われわれは、『東南アジアの2輪業界のイーロン・マスク(電気自動車メーカー、テスラ社CEO)』になりたいという、ソン氏の夢の実現を支援したいのだ」と語る。

ダットバイクは東南アジア初の電動バイクメーカーで、その優れた製品はこれまでは、資本金に乏しく、生産規模が小さかったため、需要に供給が追い付いていなかった。ジャングル社の資本提供のおかげで、ダットバイクは製品を改善し、生産を増やすことができるようになり、ベトナムをはじめ、東南アジア全域で広がる需要増加に応じることができるようになる。

ダットバイクのソンCEOの目標は、東南アジアにある2億5000万台のガソリンバイクを、電動のものに置き換えることだという。「適切な選択肢があれば、誰でも電気バイクを選ぶはずだと我々は思っている」とソンCEOは語る。

現状の電動バイクがまだガソリンタイプと比べ、性能や走行距離などで劣るために、顧客は電気への転換に二の足を踏んでいるのだと指摘。「資本提供を受けたことで、弊社は製品の改革を進め、東南アジアだけでなく、世界の人々のためにも、電気バイクの完成形を開発する可能性が与えられた」と喜ぶ。

ダットバイクは、当面はベトナム市場に焦点を当て、全国の各省に販売網を広げるとともに、新たなモデルの開発にも着手していくという。