ビントゥアン省沖に洋上型風力発電設所建設へ ベトソフペトロや風力発のデメ・グループ、コンソーシアムを結成

ベトナムで将来が有望視される洋上風力発電の実現に向け、このほど、ロシア国有石油会社、ザルベジネフチ(Zarubezhneft)と、同社とベトナム国営石油会社ペトロベトナムによる合弁会社のベトソフペトロ(Vietsofpetro)、そしてベルギーの海洋土木デメ(DEME)グループの子会社2社、デメ・コンセッションズ風力発電社とデメ洋上発電社によるコンソーシアムが設立された。4社は、ベトナム南部ビントゥアン省ビンフォン沖の洋上風力発電施設開発で、協力の覚書を締結した。

「ビンフォン・プロジェクト」と名付けられた風力発電開発計画は、2期に分けて実現される。コンソーシアムは、600メガワットの発電出力を目指す第1フェーズの商業運用開始を2026年と決定。2030年には第2フェーズを完成させ、さらに400メガワットの発電を実現することを目標としている。

プロジェクトは、総額約72兆9000億ドンの投資を集める予定だが、期待されているのは、操業によって、国の電力網に供給される数十億キロワット時の電気エネルギーだけではない。プロジェクトは、建設段階だけでビントゥアン省にとって10兆ドンの税収増となるほか、1800人の新規雇用を生む予定だ。さらに運営開始で200人、解体の作業などでさらに500人が雇用できるという。

ビントゥアン省人民委員会から全面的な支援を受けたプロジェクトは、ベトナムの「第8次国家電力マスタープラン(PDP8)」に盛り込むために、商工省に報告される予定で、人民委員会は、必要な法的手続きの実施をコンソーシアムに承認した。

実現すれば、ビンフォン沖洋上風力発電所は、ベトナム初の洋上型の大規模風力発電設備となる。デメ・コンセッションズ風力発電のアラン・ベルナール取締役会長は、「ビンフォン・プロジェクトのコンソーシアムは、ベトナムや海外の数多くの専門家らとともに尽力し、この風力発電プロジェクトはPDP8のもとで主要な風力発電拠点と認識されるようになるだろうと確信している」と話す

専門家らは、ベトナムではまだ新しいこの風力発電施設を成功させるには、投資家と開発事業者が、建設にあたって厳しい基準を満たす必要があると指摘する。例えば、沖合での洋上施設建設の経験を有し、大型の会場建設物を作るだけの技術性や専門性を備えていることが重要だ。さらに、最新型のタービンや建設基盤などについての知識や技術をもち、高度の技術を有する技術者たちがいること、さらえには協力な財政基盤と過去の沖合プラントの建設の成功事例があることなどが重要視される。

今回のプロジェクトでは、コンソーシアムの参加メンバーは専門的な経験と豊かな投資資源を有する企業であることに加え、ベトナムでの事業運営の経験があるという点も重要だ。ザルベジネフチは、1981年から、ベトナム沖の海上で、石油や天然ガスの掘削を成功させており、国際的にも世界各地で同様のプロジェクト実施経験をもつ。長期的視野においても、同社がロシアをはじめ、世界でも有数の石油会社と信頼を築いている。ここ数年間で、海上資源の掘削開発事業は、ザルベジネフチの専門分野となりつつあり、世界的な競争においても優位に立つ。そのグローバルな経験にもとづいて焦点を当てたのが、今回のベトナムの洋上風力発電プロジェクトで、再生可能エネルギー分野の開拓として取り組んでいくという。

ベトナムにおける事業運営の主体となるのはベトソフペトロ社で、ザルベジネフチは同社の株式の49%を取得している。両社は洋上掘削基盤の建設と設置においては、東南アジアでトップ企業といえる。 洋上施設の建設と運営に優れるこの2社に、デメグループの洋上風力発電における豊富な経験が組み合わさることにより、コンソーシアムによる成功は大きく近づいた。

デメグループは140年以上にわたる海洋エンジニアリングの経験をもち、洋上風力発電の建設における世界的企業だ。2014年に設立されたデメ・コンセッション風力発電は、グループ企業のひとつで、グループ内の複数の風力発電関連企業を束ねる。その実績は1.5ギガワットの発電実績に加え、開発から運営に至るプロジェクトの一環請負が世界的に高く評価されている。デメ洋上発電は、洋上発電所の基礎建設で世界的シェアの30%、風力タービンのシェアも約40%を占める。さらに、世界中で75を超える洋上風力発電所を設置してきた実績をもつ。

調印式で、ザルベジネフチのS.I.クドリヤショフ社長は、「弊社のベトナムにおける過去の経験や技術能力に加えて、ベトソフペトロとデメ洋上発電へのさまざまな優遇措置の実施、ロシア政府からの支援などもあり、プロジェクトの将来的な見通しは良好だ。この洋上風力プロジェクトの将来性は高く、今後、大きな効果をもたらすだろう」などをあいさつした。

コンソーシアムの代表者は、「省当局の支援を受けて、投資家の能力と、経験豊富で優秀な企業の参加が結集することにより、プロジェクトは実行可能であるばかりか、ベトナムにおけるまったく新しい洋上エネルギー部門の強力な第一歩で、今後のけん引力にもなるだろう」と期待を語った。