1~5月の小売販売額7.8%増、安定成長続く

新型コロナウイルスの影響が世界各国に及ぶ中、2021年1月~5月期で、ベトナムの小売販売は成長を遂げた。新型コロナの第4波が収まれば、ベトナムの小売業は海外からの投資が期待でき、より速く、力強く成長すると予測されている。

写真㊤=コロナ禍でも成長を続けるベトナム小売業

◇来店者数も増加
ベトナムの小売市場は2020年に1700億ドル(約18兆7000億円)規模となり、2021年から26年にかけて、年平均成長率は10%を超えると予測される。新型コロナによる危機が世界に波及する中で、ベトナムは感染拡大を効果的に抑制し、2020年12月には消費財・サービスの小売販売も回復した。

新型コロナの第1波が襲った2020年第1四半期は、小売販売は急激に落ち込み、多くの業界で30%減少し、ショッピングセンターへの来店者数も前年比で80%減少した。だが、第1波が収まった後、国内の小売市場は急速に回復。グーグルのモビリティレポートによると、2020年6月のショッピングセンターへの来店者数は、同年1月に比べて80%増加した。

不動産会社のコリアーズ・インターナショナル・ベトナムによると、ショッピングセンターの稼働率は依然として非常に高く、第2波(2020年7月末ごろ)の期間にも、ユニクロやフィラ、海底撈火鍋といった多くの海外企業がベトナムで店舗展開を拡大させた。

国内の小売市場は、第3波(2021年1月~3月)や第4波(2021年5月~)の期間も安定した成長を維持している。4月の商品・サービスの小売業販売額は、前月比2.3%増、前年同期比30.92%増の409兆4000億ドン(約1兆9000億円)と推計される。

商工省によると、今年1月~5月の小売業販売額は1670兆ドン(約8兆円)を超え、前年同期より7.8%増加した。注目すべきは、感染が広がった地域でも売買活動は安定して推移しており、十分な商品供給が確保されていることだ。

不動産サービスのサヴィルズ・ベトナムアドバイザリーサービス部門のドー・トゥー・ハン シニアディレクターは、「今年に入ってからの小売業向け不動産の供給は安定しており、前年比で2%増加している。平均賃料も四半期で約2%、年間では約1%上昇した」と述べる。そして、「第4波の規模や感染スピードは第1波~第3波よりも大きいが、感染が抑えられれば、小売市場は引き続き立ち直っていくだろう」と続けた。

◇業界の課題
サヴィルズ・ハノイのマシュー・パウエル ディレクターは、「海外投資家がベトナムの小売業に投資する際、ある種の課題に直面する。それは例えば、小売市場の74%が、食料品店や市場といった伝統的な小売業態である点だ。一方、26%しかない近代的な小売店は、年12%の成長を遂げている。ベトナムの小売市場は海外投資家の関心を集めてきたが、競争力がないために、撤退するケースも少なくない。その中で国内企業は、M&Aの機会をうまくとらえ、国内市場のシェアを拡大している」と指摘する。

だが、こうした課題がある一方で、ベトナムは政治的に安定し、資本管理政策も優れているため、海外投資家にとって多くのチャンスがある。厳格な資源管理と利益率の維持が、ベトナムでの小売ビジネスの成功につながるだろう。今後、GDPの成長に伴い、ベトナムの都市化は急速に発展すると予測される。中産階級の増加も国内の小売市場の発展に貢献する。

世界銀行の調査によると、ベトナムの中産階級は全人口の13%を占めるが、2026年には26%に拡大すると予測される。こうした成長は、消費支出に明るい変化をもたらし、海外の小売企業にチャンスを提供するだろう。