ベトナム政府はこのほど、2021~22年期の英国ベトナム自由貿易協定(UKVFTA)の適用に関し、ベトナムの特恵関税と特別特恵関税に関する政令53/2021/ND-CP(2021年5月21日付)を公布した。

◇99.2%撤廃
英国・ベトナム間の貿易では、全関税のうちすでに65%が撤廃されている。協定は5月1日に発効されたが、今後6年間で、英国はベトナムからの輸入品の関税品目のうち99.2%を撤廃する。これはEU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)で取り決めた70.3%を大きく上回るものだ。ベトナムは48.5%の関税撤廃を約束しており、この割合はEVFTAによるほかのEU諸国と同様となる。

関税割当制(TRQ)は、ある商品の一定量をゼロまたは削減された関税率で市場に投入することを認めるものだ。その量を超えた輸入品には、高い関税率が適用される。TRQは、英国のEU離脱に伴い、英国の輸出入量がEUよりも少ないことに合わせて変更された。貿易品が継続してTRQの恩恵を得られるように、この割当量は、過去の両国の貿易量をもとに設定されている。

そのほかの関税優遇措置では、英国へのほとんどの種類の生エビの輸入税が10~20%から0%に引き下げられたほか、木材製品も今後5年間は0%にし、果物では計547の関税品目うち94%が撤廃される。UKVFTAでは、公共調達市場の自由化などに関する両国間のコミットメントが維持されている。ベトナムは、発効から5年以内に、2店舗目以降の小売店に実施する経済的需要審査(ENT)の撤廃を約束している。

◇メリット
UKVFTAは昨年12月29日に、ロンドンで両国の大使によって正式に調印された。発効は今年5月1日。協定が完全に実施されれば、両国間の関税は、事実上すべて撤廃される。駐ベトナム英国大使館は、「この協定によって、ベトナムは1億5100万ドル(約165億円)の関税を削減でき、英国も3600万ドル(約39億円)を削減できる。UKVFTAの発効により、貿易の自由化や法的規制、グローバルスタンダードとの整合性の面で、両国関係は強化されるだろう」と予測する。

そのほかベトナムは、英国のCPTPP参加を支援することも約束している。英国のCPTPPへの参加は、多くの国で保護主義の傾向がみられる中、自由貿易に対するベトナムのコミットメントを明確に伝えるものとなる。

ベトナムは現在、タイに次いで東南アジアで2番目の対英輸出国であり、2019年の貿易額は67億ドル(約7300億円)に達した。ベトナムは主に、携帯電話や衣料品・繊維製品、水産品を英国に輸出する。また、英国は、教育や再生可能エネルギー、テクノロジー、インフラ、ヘルスケアの分野でベトナムへの投資をうかがっている。

◇将来性
UKVFTAは英国にとっては、日本との経済連携協定やシンガポールとの貿易協定に続き、アジアにおける3番目の貿易協定となる。この協定によって、世界で最も急速に成長している新興市場の1つであるベトナムに対し、輸出を拡大できる大きなチャンスが得られる。貿易協定は双方に利益をもたらすが、英国の投資家も、ベトナムの現在の法律や税制に精通しておく必要がある。ベトナムの開発目標に沿った分野をターゲットとする投資家は、長期的なプロジェクトで成功する可能性が高い。

英国は、ベトナムの教育分野における最大の投資国の1つだ。ベトナムでは中産階級が増加しており、より良い教育を求めて公立学校より私立学校を好む傾向があり、英国の投資家にとってはチャンスだ。ベトナムではまた、再生可能エネルギーの開発が活発であり、英国企業に大きな好機をもたらしている。