FDI誘致へ 工業団地などコロナ対策充実をアピール 法改正など多彩な優遇措置も

新型コロナウイルス感染の第4波が複雑な展開を見せるベトナムで、新たな海外直接投資(FDI)を誘致するための魅力を維持しようと、工業団地単位で独自の感染対策作業部会が作られ、感染予防策などが取られている。加えて、企業進出の手続き続きを簡略化しようと、投資法や起業法、PPP関連法などを改正するなど、国を挙げて多彩な取り組みを実施している。

◇感染抑制と経済回復、2つの目標達成へ
計画投資省のグエン・チー・ビック・ゴック副大臣によると、世界的な海外直接投資の回復がまだ見られないなかで、ベトナムは今年上半期、新規プロジェクトの開始によって約152億7000万ドルの投資を集めたほか、既存プロジェクトの資本金増額や株式の取得、海外企業などによる資本支援なども増大したという。これは、新型コロナの感染抑制と経済成長の2つの目標を同時に実現しようとする政府や関係省庁、業界や地域などの努力と決意を反映したものだった。

新型コロナ感染の第4波は、ベトナム北部のバクザン省、バクニン省で感染クラスターが発生したほか、何百もの工業団地が集積し、海外からの進出先として人気が高い南部のビンズオン省、ドンナイ省、ホーチミン市などでも感染が広がったことで、今後のFDI誘致に及ぼす悪影響が懸念されるようになった。そこで、新型コロナウイルスの感染を抑制するために、工業団地などでは積極的に労働者ら向けにPCR検査などを積極的に展開=写真㊤。感染抑制と並行して、これらの地域では、大規模な多国籍企業をはじめ、海外からの進出企業に有利な条件の創出に尽力し、安全な生産体制の維持と、海外投資家らの信頼回復につとめてきた。

ホーチミン市輸出加工区・工業団地管理委員会(HEPZA)のフア・クオック・フン委員長は、ホーチミン市が、輸出加工区や工業団地、ハイテクゾーンなどに拠点を構える企業に対して、検疫期間中も製造の継続を許可することを表明。また、工業団地にはそれぞれ、感染拡大予防委員会が設置され、感染拡大の予防対処にあたっていると説明した。

各企業でも、新型コロナ対策にあたる独自の作業部会や監督チームなどを設立したところがあり、積極的な検査の実施などでコロナ感染の拡大防止に努めている。

◇FDI誘致へ魅力を維持、増幅
2020年から今年初めにかけて、ベトナムで新型コロナの感染が効果的に抑制されていたことは、他の海外諸国と比較して、FDIを誘致するうえでの利点だ。ベトナム政府はさらに、多国籍企業グループなどがベトナムへの投資機会を得られるよう、支援するためのワーキンググループを設立している。

ホーチミン市経済発展研究所のチャン・ホアン・ガン博士は、「『新型コロナと安全に共存する』ことにおいて、ベトナムがイニシアチブを取るべきだ」と主張する。ガン博士の意見では、その実現によって、サプライチェーンの寸断を発生させずに、企業が安定的に製造活動を維持することができるという。「海外からの投資や企業進出にあたって、ベトナムの多面的な成果は今なお魅力的だ。行政改革を加速させ、さらに開放的なビジネスや投資の環境を作り出すべきだ」。

日本貿易振興機構(JETRO)ホーチミン市事務所の平井伸治首席代表は、今後の海外からの投資や進出の増加を見据えて、「ベトナムの各省は、インフラの整備と同時に、人材育成、特に、高度な技術をもつ労働力の育成を進め、今後に備えるべきだ」と提案する。

計画投資省は、海外からの投資プロジェクトのなかでも特に、先端技術の応用、高付加価値製品の製造、世界的な製造ネットワークや部品供給などのサプライチェーンにつながるような製造業のベトナム進出に対して、特別なインセンティブを与える投資関連首相令の草案をまとめている。条件を満たす企業には、企業の法人所得税や土地賃借、水面の賃借などにおいて優遇措置が取られるが、一方では、契約や約束に違反があったプロジェクトに関しては、税金や賃借料の軽減分の追加支払いを命じるなど、厳しい側面も盛り込まれる見通しという。