コロナで増える金融機関の不良債権 対応に法整備が急務

ベトナム銀行協会はこのほど、新型コロナウイルスの感染拡大が再び増加傾向にあることが原因で、金融機関の不良債権や不良貸付が増加していると、国内の商業銀行各行に対して警告を発出した。これを受けて、複数の商業銀行が、担保資産の売却を発表しているが、それだけでは不良債権の解消には程遠い。不良債権に関する恒常的な法整備が必要だと、専門家らは声を上げる。

◇担保資産の売却を加速
不良債権処理を加速させようと、複数の商業銀行が、保有する担保資産を競売にかける計画を明らかにした。

多額の不良債権を抱えるベトナム投資開発銀行(BIVD)は、アーチプラス建築建設株式会社の担保資産の競売による売却実施を発表した。元本残高合計に加え、競売契約締結時までの利息や手数料を含む債務総額は、今年4月15日時点で約5000億ドンに達していた。最低落札価格は約3000億ドンに設定された。同行は同時に、機械や設備などを含めた繊維製造会社、トゥイ・ダット株式会社の担保資産売却も決定したが、こちらは最低価格を63億ドンとしている。

ベトナム農業農村開発銀行(アグリバンク)は、南部カントー市のソン・ハウ農場の担保を競売する。帳簿価格では3月30日付けで、960億ドンを超える元金残高を含め、負債が3480億ドンに達していた。競売開始価格は負債総額から大きく引き下げられ、2280億ドンで始める。

このような銀行による担保資産の売却は、経済の再構築を実現するために、金融機関が保持する不良債権の処理を急いでいることを示している。

ベトナム投資開発銀行のカン・バン・リュック主席エコノミストは、これまで担保資産の売却が進んでこなかった原因について、「今のベトナム経済が直面するさまざまな困難や、債権取引市場の流動性の低さ」によるものだと指摘。さらに、現状の規制によって大幅な値引きが認められていないために、売却価格の引き下げが限定的であることも理由のひとつだとした。

◇求められる債務決済に関する法整備
ベトナムで新型コロナウイルスの感染が再拡大していることは、貿易や製造活動に悪影響を及ぼしており、結果的にこれが企業や個人の債務返済能力の低下につながっている。

BOS証券の資料によれば、商業銀行の不良債権総額は、今年第1四半期だけで91兆2440億ドンに達し、2020年年末の数字から約3兆9480億ドンも膨らんでいる。総融資残高に対する不良債権比率は0.02ポイント増加し、1.41%となっている。

ベトナム銀行協会のグエン・クオック・フン会長は、「ベトナムで新型コロナ患者数が再び増加していること、また世界的にも同じような傾向にあることが、不良債権を増加させている原因だ」と話す。今年の第1四半期に一時的に銀行の利益回復が見られたが、「その時期には潜在的な不良債権が適切に見極められていなかったため、銀行財務の健全性を正確に示したものではなかった」と分析した。

ベトナムは2017年、不良債権の処理について試験的に定めた政令42/2017/QH14号を制定した。不良債権処理や決済を加速する効果的な手法が盛り込まれた内容で、銀行や金融機関に大きな衝撃を与えた。だが、今年8月15日、この法令は有効期限を迎える。

この政令の発効後、今年4月30日までに、ベトナムの金融機関が扱った不良債権は総額350兆ドンにものぼる。

「長期的な視野に立てば、金融機関や関連する政府管理組織などが不良債権をより効率よく処理するために、不良債権処理に関する恒常的な法律が必要で、法整備を急ぐ必要がある」と、ベトナム投資開発銀行のカン・バン・リュック主席エコノミストは言う。