下半期の貿易、黒字転換へ=生産材の輸入増、輸出の伸び期待

2021年下半期、ベトナムの対外貿易は活発化すると予測され、特に輸出額が数百億ドル規模の分野では、通年目標を達成する条件が整っている。

◇力強い成長
商工省によると、今年6月の輸出額は265億ドル(約2兆9,000億円)と推定され、前月に比べて1.2%増加した。1月から6月までの上半期の総輸出額は1,576億3,000万ドル(約17兆4,000億円)であり、前年同期比で28.4%の増加となった。25品目の輸出額がそれぞれ10億ドル(約1,100億円)を突破し、そのうち5品目は100億ドル(約1兆1,000億円)を超えた。

写真㊤=新型コロナの影響を受けながらも、輸出入は活発に行われている

商工省外国貿易庁のチャン・タイン・ハイ副局長は、「世界全体が新型コロナによる深刻な影響を受ける中、輸出が2ケタ成長を遂げたのは素晴らしい成果だ」と語る。

上半期の輸入についても、国内の生産拡大に伴い大きく伸びた。6月の輸入額は推定275億ドル(約3兆円)で、前月に比べて2.7%減少したが、上半期の総輸入額では前年同期比で36.1%増加し、1,591億ドル(約17兆6,000億円)となった。

ハイ副局長は、「今年上半期に生産材の輸入が増加したことは、下半期の輸出に良い成果をもたらすだろう」と語る。

また、商工省ベトナム商工情報センターの前副所長であるレ・クオック・フオン博士は、「今年上半期は貿易赤字に陥ったが、赤字の影響は限定的で大きな問題にはならないだろう」と分析。加えて、「ベトナム経済は依然、海外企業の製造・組み立て産業に依存しているため、材料や部品の輸入は不可欠だ。消費財の輸入も伸びてはいるものの、総輸入額に占めるその割合は小さい」と指摘する。

◇成長への期待
現在、とりわけ輸出額の大きい分野では、貿易を活発化させる好条件がそろっている。例えば、多くの国々ではコロナワクチンの接種が進み、ソーシャルディスタンスの措置を緩和しているため、ベトナムの繊維、衣類、皮革、靴、木工製品の需要が回復している。また一部の国では、消費刺激策として国民への直接支援を続けており、ベトナムからの輸入品を含む商品の消費が進みつつある。

だが一方で、ベトナム製品は2018年以降、保護主義の台頭に直面し、ベトナムの輸出品に対する貿易救済措置関連の訴訟は増加傾向にある。

商工省の担当者は、2020年4月以降、海上輸送コストが高騰していることにも触れ、「輸送コストはアジアやアフリカで3~4倍に、ヨーロッパでは5~6倍、さらには7~8倍に高騰している。コンテナ不足も依然として問題だ」と言う。

同省は、2021年の輸出額は、前年比9%増の3,080億ドル(約23兆円)、輸入額は前年比16.5%増の3,060億ドル(約22兆8,000億円)となり、約20億ドル(約2,200億円)の貿易黒字になると予測する。

外国貿易庁のハイ副局長は、「輸出の促進は、マクロ経済の安定や貿易収支の維持と同時に行うべきだ」とする。また、エコノミストらは、「輸出の促進とともに、原産地規則や脱税防止、裾野産業支援を通して、効果的に輸入品の管理を行うべきだ」と声をそろえる。

商工省は、2021年から2030年における対外貿易促進戦略を策定中であり、近い将来、政府の承認を得る予定だ。この戦略は、持続可能な輸出志向を目指した内容で構成されるとみられる。