イオンベトナム、ホーチミン市のコロナ後の経済回復支援を約束 納税期限の延長など提案 

今月20日、ホーチミン市の代表らと同市に進出する外資系企業関係者らとの会談が行われ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で外資系企業が直面する課題の解決や、コロナ後のホーチミン市の経済回復加速に向けた企業らによる支援などについて、意見交換が行われた。出席したイオンベトナムは、経済回復への支援を約束する一方で、従業員向けのコロナPCR検査の費用負担軽減や納税期間の延長などを提案した。

会議に出席したのは、ホーチミン市のグエン・ヴァン・ネン党書記長と同市人民委員会のグエン・タイン・フオン委員長、同市計画投資局のレ・チー・ヒュイン・マイ局長をはじめ、同市の首脳や各部局の代表者ら。企業側からは、海外企業らでつくる経済団体のほか、貿易投資促進センター(ITPC)、ホーチミン市に進出している外資系企業のトップらが出席した。

この会議に、日本のイオン系列8社を代表し、イオンベトナムの古澤康之社長が出席。外資系企業に対するホーチミン市の支援に、感謝の意を表し、同社としてコロナ終息後の経済回復に協力することを約束し、外資系企業が直面する課題解決に向けた提言を行った。

古澤社長は、新型コロナに感染した労働者や、隔離地区に居住しているために出勤できないスタッフが多数いる現状を説明し、「営業や配達を担う人材の不足や、隔離政策で地区をまたぐ配送や配達が困難になっている」などの課題を挙げた。また、隔離政策における市民生活の維持に不可欠なオンラインショッピングも、同様の理由で消費者への生活必需品の配送が影響を受けていると報告した。

また、3日に1回行われている従業員らへのPCR検査費用が大きな企業負担となりつつあること、従業員や納入業者らが身分証明書や必要な証明書類を提示しているにもかかわらず、市内のチェックポイントにおける対応で配送が停滞することなども、問題点として提起した。イオングループの重要な事業分野であるショッピングモールの運営面でも、長引くコロナの影響で、テナント店舗が事業の継続や賃貸借契約などで難しい局面に陥っていると明かした。

そのうえで、「社会の維持と発展」と「効果的な感染拡大防止」という政府目標を同時に達成させ、ホーチミン市の経済を回復させるために、イオングループや外資系企業がホーチミン市と協力していくために、以下の5点の提案を行った。

1 税金の減免や納付期限の延長
具体的には、付加価値税や社会保障費、健康保険料などの納付期限を、現状の3カ月から6カ月に延長すること、また、法人税、個人所得税の減税を求めた。これによって、企業が一時的な事業費を内部留保でき、「従業員への対応や事業運営などに充てられる」と話した。

2 新型コロナ対策費や、PCR検査費用の軽減
企業はすでに、従業員のための大規模なPCR検査の費用で、大きな負担を強いられているとして、費   用の一部の行政負担や軽減を求めた。

3 ホーチミン市の新型コロナワクチンの接種事業(2回目)における小売業従事者の優先を継続

4 キャッシュレス決済を市民に浸透させるためのキャンペーンの実施

5 商品の輸出入手続きの簡略化
多くのコンテナが保管されているにもかかわらず、一部の税関で新型コロナのために一時的に機能が停止したため、商品流通量がかなり滞っていると説明。コロナ収束後は、商品需要や輸入量が増えると予想され、適切な解決策が取られない場合、税関にとっても企業にとっても、困難な状況になると推測した。

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古澤社長は、「ホーチミン市人民委員会の措置は、新型コロナ感染拡大の抑制に不可欠であることは理解している。さまざまな困難はあるが、イオンは今後も、新型コロナを押さえ込むための戦いにおいて、ベトナム政府やホーチミン市と歩調を合わせ、全力で支援を約束する。同時に、市民らに安心できる日常生活を提供するための小売業継続においても努力を継続する」と強調した。

ホーチミン市での感染拡大は非常に複雑な様相を見せ、展開が読めない状況が社会経済に大きな打撃を与えている。その中でイオンは、困難を乗り越えるためにベトナム政府とホーチミン市当局にさまざまな方法で協力し、市民らに安定的に商品を供給し、生活必需品の価格維持にも努めている。

ホーチミン市へのイオンベトナムの貢献の具体例としては、移動販売の実施が挙げられる。ホーチミン市商工局と協力し、コロナの影響で外出や遠方への移動が制限された市民のために、ホーチミン市内各区に350カ所もの移動販売拠点を開設=写真㊤。1カ月以上も続いている外出自粛期間中、これまでに700トン以上もの生活必需品や食料などを提供し、市民らの不便を解消してきた。

また、外食産業への供給の減少や他国への輸出停滞などで、行き場がなくなった地域の農産物の消費にも積極的に取り組んでいる。バクザン省のライチやティエンザン省の竜眼(リュウガン)、ロンアン省のドラゴンフルーツ、ダラット市の高原野菜などの消費PRをイオン系列のスーパーマーケットで展開し、農家を支援している。

このほか、今年6月には、ファム・ミン・チン首相が、企業などに社会的貢献を呼びかけたことに呼応し、イオンの日本法人とイオンベトナムのグループ8社が、政府と財務省が設立した新型コロナワクチン基金に250億ドンを寄付。ビンズオン省では当局に協力し、イオンモールの店舗をワクチンの大規模接種会場として提供するなどの協力も行っている。