新型コロナウイルスが流行するなか、eウォレット(電子財布)やスマートフォン決済など非接触型決済の利用が急増している。感染防止のために、現金のやりとりをともなわない取引を選択する人が増えていることが背景とみられる。新規業者の参入も相次ぎ、ベトナム国家銀行は今年に入ってからも5件のノンバンクを認可。キャッシュレス社会へのシフトが加速している。

写真㊤=現金のやりとりをともなわないオンライン決済。新型コロナウイルス流行の中、利用が急増している

電子財布は、クレジットカード情報や電子マネー情報を管理するアプリ。ベトナム国内では、IT大手、VNGコーポレーション傘下のジオン(ZION)が展開するザロペイ(ZaloPay)や、モビフォン・テレコミュニケーション・コーポレーションのモビフォンペイ(MobiFone Pay)eウォレットなどが相次いで市場に参入。ベトナム郵便局もベトナムポストペイ(VietnamPostPay)のプラットフォームを使ったサービスを始めるなど、電子財布ブームとなっている。

ベトナム国家決済公社(NAPAS)によると、今年1-5月の取引件数は前年同期比113%の8億件以上、取引額は同169%の8000兆ドン(約38兆円)となった。ベトナム国家銀行の決済局のファム・チェン・ズン・ディレクターは、「電子財布による取引件数は、今や銀行の取引件数とほぼ肩を並べるようになった。ただし、取引額の方は、まだまだ低い水準だ」と話す。

データによると、消費者の85%がスマートフォンを通して何らかの電子財布を利用し、42%が非接触型の決済を使用。さらに、71%が1週間に1度は電子財布か決済アプリを使っているという。新型コロナウイルスの流行以来、多くの人々が電子財布を使い、キャッシュレス決済が急増していることをさまざまな数字が裏付けている。

VISAのベトナム・ラオスのダン・チェット・ズン・マネジャーは、「すでにベトナムでは調査回答者の84%が電子決済にシフトしており、2030年を目標とするキャッシュレス社会実現への地ならしはすでにできている」と話す。
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電子財布のアプリを提供する企業は、オンラインショッピングやコンビニエンスストアとの連係など、消費者のニーズをサービスに反映させることに力を入れている。ユーザー登録すれば、買い物や各種のサービスを家から安全に注文できるだけでなく、キャッシュバックなどさまざまなインセンティブも受けられる。

ベトナム国家銀行は、新たなビジネスモデルやサービスのための法的枠組みの整備を進めており、中でもセキュリティーの強化や金利の規制に注意をはらっている。