すそ野産業の世界的サプライチェーン参入は停滞 加速には起爆剤が必要

外資系企業による部品の輸入調達の傾向が弱まり、世界的バリューチェーンに参入を果たすベトナム企業も出たことで、すそ野産業は一時、期待に活気づいた。だが、その後の参入拡大は停滞ぎみだ。後押しするには、企業努力に加え、優遇策や支援体制の充実などが必要だと指摘されている。

ベトナム商工省によると、外資系企業のうち、「本拠地を置く国で原材料や部品などを調達し、ベトナム国内に輸入している」という企業の内訳は、減少傾向にあり、2016年には58.7%だったものが、昨年は41.4%にまで減少した。さらに、ベトナムに進出している外資系企業のうち、「卸売業者に原材料調達を委託している」という企業も2016年の39%から昨年は26.8%に減少した。

このように部品の国内調達率は少しずつ高まり、ベトナムのすそ野産業が市場を拡大する素地は整いつつある。だが、多くの企業にとっては、世界的サプライチェーン参入の夢の実現までには、厳しい道のりが待っている。外資系企業も依然として、部品や原材料を供給する主要サプライヤーとしては、ベトナム企業を選出することに躊躇しているようだ。

電子機器、機械、自動車の製造と組み立て、繊維や靴製造業などの製造加工業を対象に、ベトナムのすそ野産業向けの優遇政策はある。だが、その一部は、実行内容に一貫性がなく、ベトナム商工省傘下の工業庁によると、「思うような結果が得られていない」という。

ベトナムのすそ野産業が部品調達先として選ばれない理由は、企業の製造能力に限界があること、製品の品質にばらつきがあることなどが、原因として挙げられる。さらに、「国内の部品や原材料メーカーが、外資系企業、多国籍企業などとの間に緊密な関係が築けていないことも、成果が思うように得られない要因だ」と工業庁では分析している。

国際的なサプライチェーン参入を目指す国内製造業がある一方で、ベトナムに進出した海外の企業側も、自社製品の品質を向上させ、競争力を磨くなどの努力を続けているベトナムの部品製造企業には注目している。そこで、商工省では、両者を結び付け、サプライチェーン参入を後押しする方法を模索している。

そのような外資系企業と商工省の協力が実現した事例が、「ベトナム-韓国技術相談解決センター(VITASK)」や「金型技術センター」などの設立だ。ベトナムのすそ野産業企業が、これらのセンターを利用して高い技術力を持つ人材を育成し、海外企業のニーズにあった製品製造を目指すことで技術力を磨き、間接的にベトナム企業の世界的サプライチェーンへの参入を支援している。

商工省やベトナム工業庁は、有効な裾野産業支援の展開のためには、さらなる起爆剤が必要だと考えている。例えば、技術支援センターのような施設を全国各地に設立し、それをネットワーク化して、製造業の企業活動に対する包括的な活動支援や工業関連のサービスをワンストップで提供していく体制の必要性を指摘。従来のように、国際協力施策を通じた新技術獲得や技術移植を待つだけの受け身の姿勢にとどまらず、国内での新技術の研究開発を促し、それを支援することで、すそ野産業の製品や部品に高い付加価値を与える機会を創出する必要があると考えている。

政府も、すそ野産業の発展を促進するため各省庁や部門に課題解決を促しており、裾野産業の法人税優遇対象を拡大するなど、側面支援を始めている。