環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)の締結などで昨今、ベトナムの農産物などを日本へと輸出するチャンスが大きく増大している。貿易協定締結の利点を最大限に生かすために、ベトナム商工省と日本ベトナム大使館商工部は、ベトナム生産者企業と、日本の輸入業者や小売業などを結びつける努力を続けている。

◇関税優遇の恩恵を生かせ!
現在、日本は、ベトナムからの農産物、材木、海産物の主要輸出先のひとつとなっている。今年1月から7月までのベトナムから日本への輸出額は、この3項目だけで計190億ドルにのぼった。

ベトナムと日本は2国間で「日ベトナムEPA(経済連携協定)」に署名し、両国とも「 日・ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)」と、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」の2つの多国間協定にも参加している。

CPTPPのもとで日本は、協定発効後、日本に輸入されるベトナム産の肉と肉加工品の3分の1を対象に、輸入関税を撤廃。残る3分の2の製品についても、2年から最長で16年後までに、削減したり撤廃したりするというロードマップを策定した。例えば、1頭または半頭のブタ肉は、生肉も冷凍したものも、10年以内に関税が撤廃される。ブタホルモンは、13年計画で徐々に関税を低減させていき、最終的には0関税とする。CPTPPのもとでは、日ベトナムEPAよりもさらに、条件が緩和され、市場がより開放される見込みだ。

日本はまた、主要輸入品目である魚介類についても、CPTPPの発効とともに65%の輸入品に対する関税比率を削減または撤廃する約束だ。残る35%については、6~16年かけて税率を引き下げていくとした。

◇日本でPR活動を活発化
このような優遇措置がここ数年適用されてきているものの、日本へのベトナムの食品輸出はまだ相対的に少ない。ベトナム関税総局は、農産物、魚介類、食品で日本に輸出される品目のうち、1~4月に日本へ輸出されたのは、「全体の約8.2%に過ぎなかった」と指摘する。

日本の関税当局の資料によると、日本が多く輸入する品目は、ベトナムの主力輸出品目と重なっているのだが、その大部分は、ベトナム以外の国からの輸入で占められている。例えば、農産物と魚介類の輸入は米国からが23.3%、中国からが11.3%だ。アセアン諸国からは13.4%輸入されており、ベトナムからの輸入は、このアセアン諸国からの輸入の18.3%を占めているが、日本への農産物や魚介類の輸入全体でみると、ベトナム産はわずか2.4%に過ぎないのが現状だ。

日本は、魚や魚の加工品、エビ、ウナギ、肉加工品、大豆、穀類、果物や野菜の輸入需要が高い。日本の全輸入額のうち、農産物と魚介類、食品が全体の1割を占める。このような背景をみてベトナムの輸出の増加に可能性を感じ、駐日ベトナム大使館商務部はベトナムの企業と日本の輸入業者や小売販売企業などとの接点を増やそうという努力を続けている。今年3月に日本で開催されたFOODEX Japan 2021(第46回国際食品・飲料展)にベトナム産品のサンプルを送ったほか、会場にカタログを置く用手配するなど、商工部がベトナムの企業PRを支援・代行した。

これらの努力が実り、ベトナム産品は少しずつ、日本の大手小売りチェーンであるイオンやドン・キホーテなどの店で、商品棚に並ぶようになっている。

このような動きを継続させるため、駐日ベトナム大使館商務部では、ベトナムの輸出企業に対して、日本の顧客が高品質製品を追及することや、価格の頻繁な変動を嫌うことなどの情報を発信。ベトナム企業に対し、一定の価格を維持し、定期的に、一定量の商品を安定供給できるような企業体制づくりを促している。また、各企業が製品や生産物の品質向上を目指すほか、日本のさまざまな企業のニーズに訴求できるよう、多様な品ぞろえを準備するようアドバイスしている。