今年の輸出成長、感染抑制策とワクチンがカギ

ベトナムでは、新型コロナウイルスの感染再拡大により輸出成長が鈍化している。年末にかけての輸出活動は、感染抑制策やワクチン接種の普及に大きく左右されると考えられる。

写真㊤=ワクチンの普及は、経済を回復させる最も効果的な手法だとされている

◇7月、17億ドルの貿易赤字
7月の輸出入額は、前年同月比1.5%増の557億ドル(約6兆1000億円)と推定され、年初から7カ月間の輸出入総額は、3733億6000万ドル(約41兆円)となった。そのうち、輸出額は前年同期比25.5%増の1853億3000万ドル(約20兆4000億円)、輸入額は同35.3%増の1880億3000万ドル(約20兆7000億円)だった。

1~7月の輸出額で、10億ドル(約1,100億円)を超えたのは27品目で、中でも携帯電話・部品が上位を占めている。そのほか工業加工品、農林水産品、材料、鉱物資源などの伸びも目立った。

ベトナムの貿易赤字は7月に17億ドル(約1870 1,870億円)を計上し、1~7月では総額27億ドル(約2970 2,970億円)となった。商工省は、「新型コロナの感染拡大が貿易や生産に影響を及ぼしており、今後の輸出活動は、感染抑制策とワクチン接種の普及に大きく依存するだろう」と分析している。


携帯電話製品はベトナムの主要輸出品の1つだ

◇貿易収支の見通し
一方で、世界各国におけるワクチン接種の拡大と経済の再開は、ベトナムの衣料品・繊維製品、皮革・靴製品、家具、電子機器などの需要拡大に貢献している。また、多くの国で景気刺激策が実施されたことで、ベトナムからの輸入品を含め、消費が拡大している。

さらには、加盟する自由貿易協定の効果も表れており、ベトナム製品の海外市場への進出や輸出増に向けて有利な環境が整っている。商工省外国貿易庁のチャン・タイン・ハイ副長官は、「輸出活動は、年末の数カ月間に活発化すると予測され、輸出の伸びによる貿易収支の均衡化が期待される」と述べた。

だが、こうした期待感の一方で、東南アジア諸国の貿易活動は、感染再拡大によって悪影響を受ける可能性がある。ベトナムにおいては、多くの地方自治体が、政府が義務付けたソーシャルディスタンス政策を実施したことで、商品の流通や輸送が寸断。輸出用のコンテナ不足も深刻で、物流・国際輸送コストが高止まりしている。

商工省は、まずはパンデミックから回復した市場に着目し、輸出市場の開拓を進めるとともに、新規市場への参入障壁を取り除くよう努めていく。