ベトナム東南部へのFDI堅調 工業団地の運営正常化にむけ、コロナ対策の徹底へ

2021年の1~8月、ホーチミン市やドンナイ省、ビンズオン省を中心としたベトナム東南部地域の海外直接投資(FDI)は順調に推移した。その一方で、生産現場は、新型コロナウイルス感染抑制のために、従業員が生産施設に泊まり込みを余儀なくされるなど多くの課題に直面し、地域の経済と発展に少なからず影響を与えたという。

今年8月までに海外直接投資が行われたのは、ベトナムの63省・市のうち、58の省・市。メコンデルタ地方のロンアン省へのFDIが最も多く、36億ドルを誘致した。ベトナム南部のハブ都市、ホーチミンが22億ドルでこれに続き、第3位がビンズオン省(約17億ドル)だった。

ホーチミン市に隣接するドンナイ省に開設されている工業団地を運営する同工業団地管理委員会(DIZA)によると、同省が8カ月間に誘致した海外からの総投資額は、すでに年間計画を35%上回ったという。

内訳をみると、37件は新規の投資案件で、総資本額は約2億9800万ドルにのぼり、80件が既存のプロジェクトへの追加投資で、金額は6億4800ドル近くに達した。同工業団地管理委員会のレ・バン・ダイン氏によると、この時期、新型コロナウイルスの感染が拡大する状況にあったにもかかわらず、海外投資の新規案件も追加投資も順調だったといい、その理由について、「海外の投資家らは、ベトナムの南部地域、特にドンナイ省の投資環境の改善に希望をもってくれているからだ」と分析する。

過去2か月間、ベトナム南東部地域に投資をした外資系企業は生産を維持するために、新型コロナの感染予防策や感染管理措置をより強化した。コロナの影響で、通常の25~60%の稼働率にとどまっていたが、感染は制御されつつあり、第4四半期には生産を通常どおりにまで回復できると考えている。

在ホーチミン市韓国大使館のアイン・セン・ホー商務参事官は、「いったんコロナの感染が制御できれば回復は右肩上がりになると期待して、多くの韓国企業がベトナム東南部地方への投資を拡大しているようだ」と話す。投資を受けたベトナムの企業側も、新型コロナで一時期停滞した国内の部品や原材料供給網も、今後は寸断されないと予想し、多くの企業が今後は減税措置や借入金の返済期間の延長などの申請をしていないという。

工業団地内でのクラスターが発生し、帰宅した労働者を介して家族や地域へと感染が拡大したドンナイ省などでは、首相指示によって社会的隔離措置が実施され、企業は、感染抑制と生産継続を両立させるために、一部の労働者のみが工場内にとどまって、職場で作業・食事・睡眠をとる、いわゆる〝三現場方式〟の働き方が実施されていた。

データロジック・ベトナム社でも、指示に従って三現場方式を採用していたが、同社のチャン・ティエン・ファット社長は、「感染の収束によって、条件が緩和され、三現場方式の労働者は502人にまで減らすことができた」と話す。だが、今回の第4波の感染拡大によって、同社は6月に1850万ドルだった月間売上高が、7月は1100万ドルに減少。ファット社長は、ホーチミン市に対して、サプライチェーンの混乱を回避するための今後の対策の採用を提案したという。

また、インテル・ベトナム社も、早く集団免疫を実現し、全労働者らが通常の働き方で職場復帰できるよう、当局に対し、従業員に2度目の接種を行うための早期のワクチン提供を当局に対し切望している。

ホーチミン市人民委員会のボー・バン・ホアン副委員長は、同市が新型コロナの感染拡大によって多くの課題に直面し、地域の経済と発展、さらには同市市民の生活も悪影響を受けていることを痛感していると話す。ベトナム南部地域に多い部品のサプライチェーンに、新型コロナの感染拡大が与えた被害は甚大だといい、ホアン副委員長は「難しい状況ではあるが、この地域に投資・進出している海外企業は、ベトナムの新型コロナ対策を信じ、地域が困難を乗り越えるための手助けをしてほしい」と理解を呼びかけている。