繊維・衣料品業界、「3つの現場」の実施難しく

ベトナムの繊維・衣料品業界は、継続的な新型コロナウイルスの影響により困難に直面している。Vietnam Economic Newsは、契約破棄やサプライチェーン・生産チェーンの寸断といった課題について、ベトナム縫製協会のホアン・ゴック・アイン事務局長に話を聞いた=写真。

―繊維・衣料品企業は、感染対策と生産維持の両立において、どのような課題に直面していますか。

写真㊤=企業は従業員の確保に苦慮している

まず前提として、工業団地や経済区の管理を定めた政令82/2018/ND-CP号では、企業は、終業後に従業員が滞在する場所を用意しないことになっている。

そのため、隔離を徹底するために従業員が仕事場で寝泊まりする「3つの現場」対策は、製造設備が整備された従業員の少ない企業でないと実施は難しい。1000人以上の従業員を抱える衣料品企業では、従業員が長期滞在する適切な施設を用意できないわけだ。加えて、1000人規模の衣料品企業は、月に4回のコロナ検査で毎回23万8000ドン(約1200円)の費用がかかり、総額で10億ドン(約486万円)近くになる見通しだ。

第2に、いくつかの地域では、検査結果を「パスポート」として採用したことが、バリューチェーンの混乱を招き、国内流通を寸断している。例えば、ハイフォン市では7月18~20日の間、各自動車にスタンプを押したり、運転手を検査したりする規制を実施したため、市内に入る3つの道路が数時間にわたって渋滞した。

また、首相指示16号が実施されて以降は、ハノイ市に入る国道1B号線も、検疫所の通過を待つ車で渋滞している。最大の問題は、検査用紙の基準が地域によって異なることで、例えば、ビンズオン省やホーチミン市の用紙の有効期限は3日間だが、ロンアン省のものは5日間、ドンナイ省のものは7日間だ。

―こうした課題に加えて、企業は労働問題も抱えています。詳しく教えてください。

企業は、給与の支払いに大きな課題を抱えている。正当な理由がなく、「3つの現場」対策に同意しない従業員に対し、国の支援策が与えられるかは不透明だ。もし与えられなければ、企業は従業員を守るために、どのような対策を取るべきだろうか。感染拡大に伴って、従業員の採用と定着が難しくなり、通勤にかかる費用もますます高騰している。企業は、パンデミックを避けるために故郷に帰った従業員が、再び仕事に戻るかどうかを心配している。

―業務負担を軽減させるため、ベトナム縫製協会としての提言は。

私たちはワクチン接種を推奨しているが、特に、貨物輸送を行う運転手に優先して接種することで、円滑な物資輸送が可能になると考えている。

国の管理機関は、交通渋滞や生産の停滞、サプライチェーンの寸断を避けるために、物資の流通に関する規制について理解を得るべきだ。そして、企業が感染症の予防・管理体制を整えたら、すぐに生産を再開できるようにしなければならない。

また、「3つの現場」対策に参加できない従業員に対する支援も必要だ。感染症の危険な拡大状況を考えると、彼らの不安も理解できる。だた、企業は、仕事をしていない従業員に給与を支払う余裕はない。そのほか、ロックダウンの期間終了後、受注残に対処するため、企業には時間外労働(月40時間)が認められるべきだが、それでも年間の時間外労働の上限である300時間は守る必要がある。