新技術応用で竹細工など発展 フート省ドー・スイエン工芸村

籐細工や竹細工で有名なドー・スイエン工芸村(フート省タインバー地区)は、2019年年末から1年間にわたり、伝統工芸村に近代的な技術や生産設備などを導入していく農業農村開発省のプロジェクトの対象となった。その結果、同工芸村の名産である籐と竹製品は、新たなブランド価値を身につけ、国内外へと市場を拡大しているという。

プロジェクトに参加したドー・スイエン工芸村は、籐や竹を独特の手法で加工した工芸品生産で知られている。特に、漆で細かい装飾加工を施したドー・スイエン産の竹の盆は、その独特のデザインや技術的な希少価値から、寺院や仏塔、神社に加え、個人宅などでも、礼拝用の高級仏具・神具として重宝されている。

工芸村のプロジェクト生産は、ドー・スイエン地区生産協同組合と、LV & オリエンタル・パール社の間で設立されたジョイントベンチャーとして行われた。オリエンタル・パール社が市場への販売網構築や原材料購入などの初期投資を担い、協同組合は受注や商品の品質管理を任された。生産は、受注に応じて、村内の職人らが各家庭で手作りし、協同組合が商品を集めてまわった。

インフラ整備が遅れ、時代にそぐわない機器しかなかったこの村では、新たな絵付け技術や漆の塗布手法の試行や、生産工程の機械化などの先端技術導入は、不可能だと思われていた。そのため、ドー・スイエン村では新たな製品が作られることはなく先細りしており、プロジェクト参加前は15軒の職人と協同組合、企業1社のみが生産をかろうじて守っていた。

そこで、農業農村開発省は、2019年12月から2020年12月にかけて、1年間にわたり、ドー・スイエン工芸村に最先端機器と技術を導入するプロジェクトの実施に踏み切った。技術導入に加え、ブランドの構築や生産力の向上、国内外の市場開拓を積極的に進め、同時に村のインフラ整備や職人の技術向上、さらには生産性の拡大と最終製品の品質向上を実現させた。

このプロジェクトに参加したことで、ドー・スイエン工芸村は、最先端の成型機や噴霧式塗装機、製品の両面に光沢が出せる特殊研磨機などを調達し、その技術を製品製造に応用できるようになった。

さらに、プロジェクトの施行が村に大きく寄与したのは、村周辺の環境汚染の改善と自然の保全の側面だった。籐や竹細工では、加工前に原材料を大量の水に浸す必要があるが、この作業を行うための集中施設が作られ、汚れを除去したきれいな水を排水することで周囲の環境を保全できるシステムが構築されたのだ。

これらの努力によって、一時は衰退しかけていたドー・スイエンの籐・竹細工は継承され、工芸村としても存続が可能になった。この事例は、工芸村の人々が生産を発展させ、職人の収入の改善につなげた実例であるばかりでなく、周囲の環境保護の支援によっても発展が促進された郊外地区の好例となった。いまや、ドー・スイエンの籐細工や竹製品は、ベトナム版一村一品運動(OCOP)で四つ星を獲得した工芸品の名産として知名度を上げている。