欧州企業、コロナ禍でダメージもベトナム撤退は「なし」

ベトナムに進出する欧州企業は、新型コロナウイルスの第4波による影響で、受注が18%も減少したにもかかわらず、ベトナムでの事業を継続する意思を示している。

◇景況感は悪化
在ベトナムヨーロッパ商工会議所(EuroCham)が、現在の社会的隔離措置が実施される中で調査した景況感指数によると、過去10年間で最低の15.2ポイントにまで低下した。調査した企業の76%が、今年6~8月の期間、業績は不振であったと答え、そのうち29%は「非常に悪い」と回答した。一方で、大部分の企業は、今年の残り3カ月で業績は「わずかに回復する」と予測した。

写真㊤=政府には、企業の生産・貿易の回復を支援する用意がある

調査した企業の71%は、現在の厳しい状況は「輸送や供給の制限に起因する」とし、51%は「市場の状況が主な要因」と答えた。Boschベトナムのグル・マッリカールジュナ社長は、「『3つの現場』や『1つのルート・2つのスポット』といった感染対策の実施では、多くの困難があった。会社としてコストが増えるとともに、労働者の健康や精神にも悪影響を与えている」と話す。

また、労働者へのワクチン接種にも課題がある。EuroChamの調査では、56%の企業(大部分はホーチミン市)は労働者に1回目のワクチン接種を行ったが、残りのほとんどの企業は、「ワクチン接種に関する情報を受け取っていない」と回答した。

EuroChamのアラン・キャニー議長は、「もしこのような状態が続けば、私たちの新規の投資案件はリスクに直面し、企業は東南アジアの別の国へ移転を検討しなければならなくなるかもしれない。私たちのデータでは、製造業の18%がすでに、需要や注文のあった生産の一部を他国に移転した。16%は将来的な移転を検討している」と指摘する。一方で、キャニー議長は、「ベトナムからの撤退を決めた欧州企業はなく、全体的にみてEUの投資家は、依然ベトナムの経済を楽観視し、長期的な事業展開をさらに推進したいと考えている」と続けた。

◇困難の克服
欧州企業がコロナ禍の困難を克服できるように、ファム・ミン・チン首相はこのほど、駐ベトナム欧州連合代表部の大使、EU各国の大使、EuroChamや欧州企業・組織の代表と会談した。

チン首相は、「ベトナム政府は、欧州企業が投資やビジネスを行いやすい環境を作り出す意思がある」と述べた上で、EU各国に対し、需要のある分野に対するベトナムからの投資を加速し、長期的な二国間投資・貿易協力に貢献するよう求めた。

さらに、チン首相は、パンデミックの抑制に様々な施策を講じていると強調。政府は、企業の困難に対処するための特別作業部会を立ち上げ、新型コロナの影響を受けた企業や協同組合、家内工業を支援するための決議を発表した。

また、政府は、経済復興計画を立案して、長期的・短期的にパンデミックに適応した経済を推進するよう関係機関へ指導を行っている。その上で、チン首相は、海外の投資家に対し、ベトナムのパンデミック対策への参加を呼び掛けた。

EuroChamは、新たに発表された政府決議が、税金や手数料、感染予防の面で、企業の助けになることを期待している。チン首相は、「欧州企業が困難を克服してベトナムでの事業展開を維持するために、政府は最善を尽くしていく」と断言した。