ワクチンの接種拡大を切望 ベトナム企業など、FDIの維持拡大に必須 

ベトナムは、国内での新型コロナウイルス感染の第4波や、他の国々での感染拡大などにもかかわらず、外国直接投資(FDI)の誘致が引き続き、成長を見せている。だが、財界では、投資家の信頼を得て、この流れを継続的に享受するには、ワクチンの接種拡大を含めた迅速な感染制御策の導入が必要だとする声が企業などから高まっている。

◇ホーチミン市の製造業の低迷
新型コロナの第4波の感染拡大が複雑化した影響で、多くの工場は感染者拡大を抑えるために、工場の操業停止や製造量の引き下げなどの措置に踏み切った。その影響もあり、8月の外国直接投資(FDI)は前月比で14.3%減少、前年同月比12.2%減となった。ただ、1~8月の8カ月間で見れば、FDIは前年同期比で、わずかだが上昇した。

もっとも大きな懸念は、長引く社会的隔離措置の実施で、製造業が操業を維持できるか、ということだった。ベトナムの8月の製造業生産量は前年同月と比べ11%も減少し、なかでもホーチミン市は記録的な51%減にまで落ち込んだ。

ほとんどの工業がベトナム南東部に集中する繊維業、衣類縫製業、皮革製品や靴の製造業などが今回の最新の感染拡大で影響をより強く受けることとなった。原材料供給網の寸断が起こったことも、これらの分野での製造を停滞させた。

一方で、スマートフォンなどの電子機器の組み立てと製造は、北部に製造拠点が多いため、そこまでの打撃を受けずに済んだ。

北部では、少しずつだが、製造活動が正常にもどっている。ベトナム全体としても、一時期はサプライチェーンの流れが寸断されたが、投資先としての魅力は依然として維持されているといえる。

◇迅速な感染管理対応を
ベトナム外資系企業協会(VAFIE)のグエン・バン・トアン副会長は「ベトナムに必要なのは、迅速な感染管理対応とワクチンの接種の加速だ」と話す。また、新型コロナの影響を特に大きく受けた省や都市などに対して、生産ネットワークへの影響を最小限に抑えるために、適切な対応が求められていることも指摘した。

ベトナムの堅固な経済活動基盤と、投資を誘引するさまざまな魅力は、ベトナムが海外からの投資を取り戻すための重要な要素で、今も維持されている。例えば、韓国のサムスン電子は、ギャラクシーブランドの折り畳み式スマートフォンのベトナムでの製造を、今後、1年あたり2500万台にまで増やす方向だ。また、LGディスプレイ・ベトナム・ハイフォン社は、有機発光ダイオードのスクリーン製造を月産960万~1000万台から1300万~1400万台にまで増やすために、14億ドルもの大規模投資を行った。

ファム・ミン・チン首相は、各省庁や地方自治体などに対して、「近い将来、われわれは新型コロナとの共生に適応する必要があるだろう」と説明。適切な対応や生活、企業経営の在り方や改革などを探るよう求めている。この共存に向けたシナリオは、ベトナムにおける新型コロナワクチンの接種の進展に大きくかかっている。

ディン・チョン・ティン准教授は、新型コロナの感染予防と管理におけるこれまでの政府や各省庁、地方自治体などの努力が、投資家のベトナムへの信頼感へとつながったとみる。「次にベトナムが必要とするのは、感染の迅速な抑制と、投資に向けた優遇策の導入だ」と話す。

新型コロナの世界的な感染拡大によって、ベトナムを含め多くの国々がFDI誘致戦略を変更した。 ベトナムも、好ましい投資環境やインフラを築き、誘致に向けた政策を充実させる必要がある。さらに、外資系企業による投資誘致の可能性の高が高く、利点の大きい分野がどこなのかを見極めて、誘致していく必要があるだろう。