ベトナムへの自動車用部品や部材、スペアパーツなどの輸入が、ここ数カ月で急増するなど、自動車組み立て・製造業界が、顕著な回復のきざしを見せている。政府の「2020年自動車業界発展マスタープラン」は、業界をベトナムの「工業化と近代化促進の推進力」と位置付けており、新型コロナ収束後の販売台数の回復にも期待がもたれている。

◇部品輸入が増加
ベトナム関税総局によると今年の8月、価格にして約3億2900万ドルの自動車部品やスペアパーツ類が輸入されたという。前月に比べて9200万ドルの減少だったが、1~8月の合計で見ると、自動車部品類の輸入総額は33億8000万ドルで、前年同期比率で48.9%もの増加となった。

輸入部品の主な仕入れ先は韓国、日本、タイ、インドと中国。8月のこの5カ国からの自動車部品の輸入は、全体の約80%を占め、計2億6500万ドルに達した。

新型コロナウイルス感染の複雑な拡大状況にもかかわらず、自動車の組み立てと製造は好調を維持した。1~7月のベトナム国内の自動車組み立て製造台数は約18万5300台で、1年前と比べて40%の増加を見せた。平均で毎日838台の自動車が完成している計算だ。一方で、同時期の完成車輸入は9万8000台ほどだった。

これらの前向きな数字は、自動車組み立て製造業界に向けた数多くの優遇政策の効果のあらわれだといえる。多くの人気車種がベトナム国内で組み立てられたというだけではなく、新型コロナの感染拡大が制御されるに至ったことで、国内生産された自動車の販売も、これから年末に向けて回復するとみられている。

 ◇自律生産の実現へ

ベトナム商工省によると、国内で組み立てや製造が行われた自動車の台数が過去2年間に急速に増えたことにより、組み立て企業や自動車メーカーは次第に国内市場における自分たちの役割と地位を主張するようになっているという。

現在、ベトナム国内で自動車組み立てや製造にかかわる企業は40社を超える。ベトナム運輸局のデータによれば、国内組み立て・製造の自動車は2018年に28万7586台だったのが、昨年は32万3892台に増えている。さらに、自動車製造の世界的な部品や原材料供給網に多くのベトナム企業が参入するようになった。これによって、ベトナム国内で組み立て製造可能な自動車の総台数は1年あたり約75万5000台にまで増えた。このうち35%が外資系企業によるものだ。

過去3年間に、9席以下の自動車の製造台数は、国内需要の70%を国内の組み立てや製造で賄えるところまできた。7トン以下の軽トラックや25席以上のバス、特殊車両などの国内生産比率も高まっており、軽トラで約半分、バスで6割が国産となっている。さらに、ベトナム国内で組み立て製造された自動車は、近隣のフィリピンやタイなどへ輸出されるようにもなっており、コロナ後のベトナムの自動車の自律生産実現に向けて期待が高まっている。