コロナ禍でも成長の勢いは維持 ベトナムのIT分野

製造の停滞や原材料供給網の寸断など、ベトナムでも多くの経済分野が新型コロナウイルスの感染拡大によって打撃を受けるなか、IT(情報技術)分野だけは、今後の成長の余地がありそうだ。柔軟なビジネス運営が成長を維持し、今後も特定の分野で大きな飛躍を遂げるだろうと予想されている。

◇社会にさす光
新型コロナが多くの経済分野に暗い影を落とすなかで、リッケイソフト(Rikkeisoft、本社:ハノイ市)は10%を超える年間成長を維持することができた。特に今年1~3月の同社のソフトウェア輸出の伸びは目覚ましく、前年同期と比べて20%も増加した。

リッケイソフト社のグエン・ビェット・ラム副社長は、同社が「デジタル改革など、通常以上に高い能力を必要とする難しい分野の研究開発を拡大し、満足のいく結果を得ることができた」とその飛躍の要因を説明する。ベトナムで社会的隔離が実施されていた時期、同社はいちはやく、成長の見込めるインターネット上での小売業展開や電子商取引などに適したデジタル改革に集中して取り組んだのだ。

日本にも関連会社、リッケイ(東京都)を設立している同社の顧客には、日本の巨大スーパーや大手小売りチェーンなどが含まれており、「この分野でのリッケイソフトの売り上げは1~3月に300万ドルを超えた」とラム副社長は説明する。さらには、人工知能(AI)の導入や、複数の端末で分散的に情報処理などを行う「ブロックチェーン」などの新たな高度技術分野でも成功を納めている。リッケイソフトが投資や開発にかかわったプロジェクトは、海外の基金から1200万ドルの資金を集めた。

ベトナム情報通信省のファム・ズック・ロン副大臣によると、今年、4月末以降ベトナムを襲った新型コロナ感染の第4派によって、企業は大きな打撃を受けた。「だが、ベトナムのIT企業たちは目覚ましい回復力を見せた。なかには前期比300%以上もの成長を遂げた企業もある」と話す。例えば、今年表彰された76社の主要情報通信技術(ICT)企業の総収益は、業界全体の61%近くを占め、186兆6900億ドン(約80億ドル)を超えたという。

◇収益性の高いデジタル変革

ベトナムソフトウェア・ITサービス協会のグエン・バン・コア会長は、新型コロナの第4波は、ベトナムの人々の生活や企業活動のあらゆる側面に悪影響を及ぼしたと見ている。だが一方で、デジタル改革を推し進める情報通信技術系の企業にとっては、新たな機会の創出にもなったという。

インターナショナル・データ(IDC)社では、2022年には、ベトナムの70%の組織や企業が事業運営の方法を変換して情報技術を応用するようになると予測。顧客との相互作用が増え、労働生産性が改善され、経済回復を後押しするだろうと分析している。デジタル技術による生活やビジネスの変革であるデジタルトランスフォーメーションに向けた投資総額が、2023までに、世界全体で6兆8000億ドルに達するだろうとも指摘する。

ベトナムの情報通信大手FPT社のチュオン・ザー・ビン取締役会長は、このような世界的変革を見据え、情報通信技術関連の企業はそれぞれの強みや創造性を総動員して、「ベトナムの繁栄のために、率先してデジタル変革に取り組み、加速させる必要がある」と訴える。

FPTは、自社製品を活用したエコロジー施策の研究開発を推進しながら、政府や組織、企業のデジタルトランスフォーメーションにも大きく貢献。2030年までに、この分野で世界のトップ50社に入るという目標を掲げている。