EU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)は、ベトナム産のフルーツや野菜の対EU輸出を促進したが、一方で、輸送コストの増大が、これらの青果物の競争力を低下させている。

写真㊤=輸出用のパッションフルーツの加工

◇有利な条件
外務省、商工省、農業農村開発省が共同開催したEU向け青果物輸出に関するウェビナーで、外務省のグエン・ミン・ヴー副大臣は、「ベトナムは、アジア太平洋地域の新興国の中で、唯一EUと自由貿易協定を結んだ国であり、非常に大きな競争力を持っている」と語った。

駐EU農業参事官であるチャン・ヴァン・コン氏は、「EVFTAによって、青果物とその関連製品の94%が免税となる」と指摘する。EUでは目新しく、高栄養価の青果物へのニーズが高いが、その中でベトナムは、フルーツの品質向上に努めており、すでに今年は、リュウガン、ライチ、ジャックフルーツ、生マンゴーを欧州に輸出している。


ベトナムのフルーツ缶はオランダの消費者に人気

◇不十分な支援策
コン氏は、「EUへの青果物輸出では、品質と安定生産を確保できる大規模な栽培地が不足し、EUの基準を満たす国際認証を受けた企業も少ないことが課題となっている」と話す。さらに、「保存や加工方法は限られており、パッケージやラベルも人目を引くものではない。EUへ輸出するための貿易促進プログラムや支援策はいまだ十分ではなく、特に、輸送コストが高すぎることが、ベトナム産青果物の競争力を下げている」と続けた。

Vina T&Tグループのグエン・ディン・トゥン会長は、「青果物の出荷前検査を行うEU職員がベトナムにおらず、輸出業者は、欧州到着時に注文がキャンセルされるリスクを負っている」と指摘する。トゥン会長は、「省庁は企業と協力して、大規模な栽培地を開発するべきだ」と提案し、「企業は、EUの食品衛生や安全性に関する規則に注意を払い、社会的責任や環境保護に関する認証を完全に持つ必要がある」と語った。

チャイン・トゥー輸出入会社のゴー・トゥオン・ヴィ副社長は、少なくとも3つの青果物に対し、国家戦略を策定するよう政府に助言した。また、ファム・ベト・アイン駐オランダベトナム大使は、「ベトナムは栽培地の拡大とともに、GlobalGAP基準を満たすためには農業分野における科学技術の革新が必要だ」と指摘した。

EUは、ベトナムにとって有望な市場であり、年間の青果物輸入額は350億ユーロ(約4兆5000億円)で、世界の青果物貿易の45%を占めている。