海底油田を多く抱え、石油埋蔵量が東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国で第1位であるにもかかわらず、ベトナムの石油・天然ガス生産は、2015年以降、減少が続いている。ポテンシャルの大きさに比べ、開発生産が進んでいないことが伺えるが、その原因は何か?解決策はあるのだろうか?

◇油田の探査・開発の減少
現存するベトナムの油田はもうすでに15~35年間、掘削が続いており、生産の末期にさしかかっているといえる。国内の石油産出量は、2015年の1690万トンをピークに2016年には1520万トン、2017年年が1340万トン、2018年が1200万トン、2019年が1100万トンと右肩下がりで、昨年は970万トンにとどまった。

ベトナム国営石油最大手のベトナム石油ガスグループ(ペトロベトナム)を始めとする石油各社が、新たな油田やガス田の試掘を行い、生産の減少を食い止めようとしている。

ペトロベトナムでは科学的な研究開発を実施し、近代的な掘削機械や機器の活用を行うなどの技術革新によって、掘削量の回復に取り組んでいる。国営企業でもあるため、同グループは政府の設定する年間掘削量をなんとか達成しようと、絶え間ない努力を続けているのだ。

◇生産の維持・増加に向けた解決策は?
政府が設定した2020~2025年の石油とガスの産出目標を達成するために、ペトロベトナムは技術や科学の改善、投資の増額、組織内の機構改革や人材育成などあらゆる面での課題解決を図ってきた。現存する油田だけでは石油の減産が避けられないため、同グループは石油の産出を維持し、増産へと転じるために、新たな油田開発を試みている。

だが、新規の油田開発の成功率は20%に過ぎない。加えて、石油やガスの新規採掘プロジェクト実現に必要となる面倒な行政手続きが、国営企業であるペトロベトナムや同社傘下の企業で国からの資金投資を受けているペトロベトナム石油・ガス開発公社(PVEV)などによる油田探査実施の妨げとなっている。つまり、エネルギー業界の運営は、経営促進のための有利なメカニズムと充実した政策の必要性を促しているのだ。

ペトロベトナムのブー・クアン・ナム前副社長は、ベトナムの石油・ガス部門が1カ所の油田・ガス田を新たな探査実施のためには、1000万~1500万ドルの資金投資が必要であると指摘する。つまり、ベトナムの石油・ガス業界には、巨大な資本投資需要があるということだ。

ペトロベトナムのレ・マイン・フン最高経営責任者(CEO)兼社長は、「ペトロベトナムは油田とガス田の新規探索と開発を最優先事項としてきた」と説明する。だが、掘削技術や油田の位置に加えて、法的規制などがもたらす障壁などによって、ペトロベトナムや傘下企業の事業展開の妨げとなってきたという。

ベトナムの領土内で確認された石油やガスの埋蔵量は、まだまだ大きいと予想されており、開発生産が思ったように進んでいないことを示している。今後、これらの新たな油田・ガス田の調査や探索、掘削生産が停滞なく展開されることが、経済の発展と国の主権保護を実現させるカギとなりそうだ。

◇コロナ禍も10カ月目標を達成
ペトロベトナムが成果を上げる方法の1つは、石油・ガス探査、掘削、生産処理、最先端技術やサービスなどの分野を横断して、連携した石油・ガス産業のインフラ整備を進めることだ。ベトナムの潜在的な石油埋蔵量は、16億~28億トンと見込まれており、国のエネルギー安全保障を実現するためにも、掘削活動の持続と拡大が模索されている。

このような努力のおかげで、新型コロナウイルスの感染拡大が経済に大きく影響していたにもかかわらず、今年10月の月間石油生産は目標数値を6.6%上回り、減産に歯止めがかかったかたちだ。1~10月の総産出量(909万トン)も当初の10カ月目標を12.4%上回り、政府の75兆4000億ドンの財政収入をもたらした。目標を21%上回る数字で、前年同期と比べると23%増だった。

これらの成果は、コロナ感染の拡大が最もひどかった時期においても、同社の6万人近い労働者らが熱意をもって業務を遂行し、石油・石炭掘削事業を継続させたことで実現できた。これらの社員と技術者らは、新型コロナの感染抑制を支援するために数百億ドンの募金を集め、洪水に見舞われた中央地域の支援にも、数千億ドンの寄付も実現している。